世界の天然ガス価格が史上最高値に急騰
2021年8月03日(火) by: ラモン・トミー

世界各地で天然ガスの価格が最高値を記録しました。これにより、一般家庭や企業のコスト増が懸念されています。また、時間の経過とともに燃料不足が深刻化することも懸念されています。

 


英国では、液化天然ガス(LNG)の価格が、2005年以来の高値となる1英ポンド(1.39米ドル)/1サーマルを超えて高騰しました。フィナンシャル・タイムズ紙によると、天然ガスに含まれるエネルギーの量を示す1サーミスター。一方、欧州のLNG価格は初めて40ユーロ(47米ドル)を記録しました。長引く冬の影響で欧州各地のLNG貯蔵量が減少し、価格が上昇したのです。

アジアでも、旺盛なエネルギー需要に対応するためにLNG貨物を誘致しようとして、価格が急騰しました。エネルギーコンサルタント会社のICISによると、LNG貨物のスポット価格は1百万英領熱単位(MMBTU)あたり15米ドルを超えました。欧州や英国での価格は、換算すると1MMBTUあたり14米ドル近くになります。

最大のLNG供給国であるロシアは、武漢でのコロナウイルス(COVID-19)の大流行以前に比べて、大陸へのガス供給量が減少しました。ヨーロッパ本土での価格と需要が上昇しているにもかかわらず、ここ数ヶ月はウクライナへのLNGの上乗せ分を送らなかったのである。評論家は、モスクワが欧州連合(EU)に圧力をかけて、2021年後半に天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の立ち上げを承認させようとしている可能性を提唱している。

ICISの天然ガスアナリストであるTom Marzec-Manserは次のように述べています。「どちらかといえば、もっと懸念されていないのが不思議なくらいです。追加の供給という点では、世界的に見ても選択肢は多くありません。裁量権のある供給源はロシアだけですが、いつ追加供給が開始されるかはわかりません。そのため、日本からブラジルまで、世界中のトレーダーが欧州の価格にも注目し始めています」。

しかし、LNG価格上昇の要因は、ロシアだけではありませんでした。COVID-19パンデミックからの回復に伴い、世界中の天然ガス供給が逼迫している。例えば、ブラジルでは干ばつの影響で水力発電所の稼働率が低下したため、LNGの輸入量が過去最高になったという。


冬場の暖房用LNGは価格高騰の影響を受ける

 

また、北海やオランダのフローニンゲンガス田からの欧州産LNGの国内生産量も大幅に減少しました。グローニンゲンガス田は、相次ぐ小規模な地震によりLNG生産の制限を余儀なくされました。S&P Global社のレポートによると、陸上のフローニンゲンガス田の完全閉鎖は早ければ2023年になる可能性があるという。

 


オランダのガスグリッド運営会社Gasunie Transport Services(GTS)は、2021年6月の声明で次のように述べている。"GTSは(オランダの経済担当)大臣に、フローニンゲンガス田の最終閉鎖を早ければ2023年に行うことが可能であることを示しました。"

現在の計画では、フローニンゲンのLNG生産の大部分は2022年半ばに終了する。現在の計画では、フローニンゲン油田でのLNG生産の大部分は2022年半ばに終了しますが、同油田の一部はバックアップのガス供給源として稼働し続けます。この計画では、フローニンゲンの完全閉鎖は2025年半ばから2028年半ばの間に行われる可能性が高いとしている。GTS社の声明は、予定よりも早く同油田が永久に閉鎖される可能性を示唆しています。

とはいえ、アナリストたちは、北欧のLNG生産量は2019年前半から少なくとも10%減少していると指摘している。(関連記事 アメリカに安定したエネルギーを。米国東部の天然ガス供給量は需要を上回るペースで増加している)

 


一方、アメリカの天然ガス生産量もパンデミック前の予測を下回っていた。2020年にアメリカの石油生産量が価格の急落とともに減少すると、ガス生産量にも間接的な影響が出てきた。天然ガスは、原油の副産物として生産されることが多かったからだ(関連記事:膨大な天然ガス資源を掘り起こすには、二酸化炭素が鍵となる可能性があるとの研究結果が発表された)

 


米国のLNG価格は4米ドル/MMBTUを超えるまでに上昇したが、それでも欧州に比べればはるかに低い水準にとどまっていた。これは、LNGの輸出能力が十分ではなく、トレーダーが両地域間の差額を効果的に裁定することができなかったことが一因となっています。

世界的なLNG市場の逼迫は、今後の冬を不安にさせるものでした。欧州では、冬になると暖房のために天然ガスの需要が増加します。これまでの価格高騰時には、発電機による天然ガスから石炭への燃料転換が需要を低下させていました。しかし、一般炭の価格が上昇したことで、この方法は通用しなくなりました。

 

 

 

 

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