わずか3時間の間にジェットコースターのようにいろいろなことが起こったその日、音楽院の建物を出ると夕方になっていた。


オレンジ色の夕日が照らす街は、風景が一変して見えた。


ほんの2ヶ月前、道に迷った方向音痴の私が、ママ友に臨時の待ち合わせ場所として、この音楽院を指定されなかったら、今日のすべての出来事が起こっていなかっただろう。


そう思うと本当に不思議だった。



それにしても、よくよく考えれば、音大卒業でない私が、音大卒業を第一審査の条件に掲げるこの音楽院に出願するなど狂気の沙汰である。だが、あの時の「出願してみたい」という強い直感に従って本当に良かった、と思っていた。



帰り道を歩きながら、実技試験のアンダンテスピアナートを演奏中、ここが何処かわからなくなる瞬間があったことを、私は改めて思い起こしていた。


アンダンテスピアナートの過去の追憶をよみがえらせやすい曲想に加えて、忘れていた過去を彷彿とさせるような数々の言葉のために、目を閉じて弾いていると、懐かしい子供時代のレッスン室にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る瞬間があったのである。



副学長の言葉の数々


「子供時代のローカルなコンクール歴なんて、何になる!」

「あなたが何を弾けようとも、ちゃんとした音楽の専用教育を受けたかどうか、それが問題なのだ!」

1曲弾け!そうすれば全てわかる!」

「言葉でなく音楽で自分自身を語れ!」



全て子供時代に聞いた覚えのある言葉だった。 

もちろんもっと優しい言い方だったけれど。