「これを知らない人に卒業証書をやるわけにはいかないな。
ここは音楽院の専門教育の中でも、非常に大事な部分だ。
よし、4年次に入れ。
そして、こういう理論を1からキッチリ勉強して、きちんとマスターしなさい。
そうしなければ卒業はさせない。」
これで関連科目の試験が終わった。
「で、ピアノは誰に師事したいかね?」
私はあっけにとられた。
そんなこと、何も考えていなかった。
第一、受かるかどうかわからなかったし、試験の準備で必死で、そんな事まで考える余裕はなかったのだ。
「すみません、まだこの音楽院の先生にどういう方がいらっしゃるか存じません。入学させていただけるかわからなかったので、そこまで考えていませんでした。」
と正直に答えると、
「そうか。では。」
と少し思案してから、電話で誰がと話した後、
「あなたのことを、◯◯教授が引き受けてくださることになった。
これで今日の試験はおしまいだ。
先程言ったことを繰り返すが、
必ず『本物のピアノ』で練習するように。
そして毎日必ず、最低4時間は練習するように。
「自己抑制」の課題を念頭に試験の準備をするように。
それから、音楽理論、アナリーゼはここで基礎からキッチリ学ぶこと。
いいね。
何度も言うが、学年末の卒業試験(その学年を修了できたかの試験)は非常に厳正で厳しいぞ。
幸運を祈る。」
「どうもありがとうございました。」
こうして、この日の波瀾万丈な試験が終わったのだった。