「あなたは私が思っていたような人ではなかった。」 


背後で流暢な英語が聞こえた。


(えっ、英語?)と驚いて振り返ると、


「お望みなら、〇〇語でもいいよ。」とユーモラスな様子で肩をすくめながら、今度は別のヨーロッパ系言語で言って、微笑んでいる。


今までの激昂が嘘のように、別人のように穏やかな話ぶりで、その人は話し始めた。

 



あなたが完全に理解できるように英語で話そう。



私は思い違いをしていた。 

あなたは私が思ったような人ではなかった。



あなたは音大を出ていないが、ちゃんとした音楽の専門教育を受けている。



もともと、第一審査の音大卒業の条件は、音楽の専門教育を受けてきた人だけを入学させるために設けた、スクリーニングのための審査基準だ。



だから音大を出ていなくても、音楽の専門教育を受けてきたあなたは、当音楽院の元々の入学資格条件を満たしている。



よって私の権限で、あなたの入学を許可する。


ただし、その前に2つ条件がある。それについてあなたが約束できたらだ。


あなたは、今現在は、「本当のピアノ」でないもので練習しているね。「本当のピアノ」で日々練習することがまず1つ目の条件だ。


もう1つ目の条件は、1日最低でも4時間は練習すること。


この2つの条件を今ここで私に約束できるかね?


答えはもちろん、「約束します」だった。