はじめまして。新名香織(ペンネーム)です。


私は、自分の実母のことをかなり大きくなるまで継母だと思っていました。兄弟と私へのあからさまな待遇の違いと私への差別の仕方が、子供が読む物語にでてくる「継母」という存在の行動様式によく似ていたからです。


しかし、中学生になって間もないある日、偶然戸籍謄本を見て、継母ではなく実母だとわかり、衝撃を受けました。


それまでの私は、いつか「本当の優しいお母さん」が迎えに来て、悲惨な家庭環境から救出してくれるのを夢見て日々を過ごしていました。


さすがに小学校高学年ぐらいになると、一向にやって来ない「本当のお母さん」は、もしかしてもう亡くなってしまったのだろうか、という思いが心をよぎることもありました。


それでもこの一縷の望みを頼みに生きていた私にとって、戸籍謄本で事実を知ったこの日は、いつかは「本当のお母さん」によって救出されるという希望が完全に絶たれた日となりました。


実母になぜこんな仕打ちを受けるのか。


その謎を解きたくて、その頃から心理学の本を読むようになりました。


心理学は、好きだった音楽の道を絶たれた体験を乗り越えようとする際にも、ずっと私の支えでした。


大人になり心理士になった私は、私と同じような子ども時代を送ったために、正常な社会的生活がもはや不可能なほど精神を壊されている方々を、何人も見てきました。


同じような経験をしたのに、どうして自分は生き延びることができたのか。


何が違い、どのような助けを受けることができたおかげなのか。


それは子供時代のピアノレッスンでした。


このレッスンは、私に音楽の専門教育など受けさせる必要はないと考えていた親の意に反して、武蔵野音楽大学と武蔵野音楽大学附属音楽教室の善意とご厚意により受けることができたものでした。


そのレッスンが、音楽教育という観点からも、心理療法という観点からも、斬新で優れたものであったことに私が気づくまでには、長い年月がかかりました。


被虐待を乗り越える方法という、私がずっと探し求めていたものは、実は手元にあり、効果を発揮し続け癒し続けていたのでした。そのおかげで、私は他の同じような経験をした人より、ずっと軽い被害で済んでいたのです。


このブログを始めるにあたり、恩師、故ヤン・ホラーク教授に心からの感謝を捧げます。また、このレッスンを受けることを可能にして下さった、武蔵野音楽大学と武蔵野音楽大学附属音楽教室に心からのお礼を申し上げます。