会真記(鶯鶯伝) | 千紫万紅

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中国唐代の伝記小説。太平広記の第四八八巻に収録されている。かの有名な古典戯曲「西廂記」の元ネタ。会真記のタイトルはもっぱら明代以降に用いられるようになったもので、それ以前は鶯鶯伝と呼ばれていた。

 

ストーリーのあらましは当然ながら西廂記と一緒。科挙受験を控えた張という若い書生が、旅先の寺で未亡人の令嬢・崔娘(鶯鶯)と恋に落ち、侍女・紅娘の助けにより彼女と思いを遂げる、というもの。

西廂記はこの後、張が試験に合格、無事に鶯鶯と結婚してハッピーエンドだが、本作では結末が異なっている。張と鶯鶯はそれぞれ別の相手と添い遂げ、一年余りして再会するも、顔を合わせることなく手紙のやり取りをして別れていく。何ともカタルシスの無いラストだが、唐代伝奇の大半はそういうもんなので仕方ない。そもそも読み物として大衆向けに書かれたものではないからね。

 

人物造形も西廂記とやや違う。張は何だかお高く留まった感じの青年で、西廂記の張君瑞ほどなよなよしていない。鶯鶯も家が金持ちというだけで、宰相の娘ではない(ツンデレぶりはこの頃からしっかり描写されているけど)。紅娘も殆どチョイ役。西廂記で有名な拷紅の場面も無し。とはいえ、彼女がカップルのために布団を持って張の部屋を訪れるくだりは、急展開過ぎてなかなか笑える。

唐代伝奇でも有名な一遍なので、興味のある方は一度読んでみるといいだろう。