2月15日

「もう、吸うの止めた方がいいよ。私、薬、飲んでるし」
「うん、分かってる。でも、君の血は美味しいし、何より君の血を吸うと、
身体が温まって、生きているって感じがするして、止められないんだ」
「知ってる、あなた、最近、歳をとってきているのよ」
れはきっと私の血のせい。私が飲んでいる薬のせい
「私より先に逝ったりしたら許さないんだから」
「うん、分かってる、でも止められないんだ。分かるだろ。
悪いものほど止められなくなるものだと」
そう言って彼は、一層強く私の血を吸い上げた。


2月16日

「先生、今回も素晴らしい作品ばかりですね」
個展を開くと破格の値段で売れて行く私の作品。
不器用な私は未だ自分がイメージした作品を作り出せたことはないというのに。
所詮芸術とはこれが芸術だと世間が評価したものということだろうか。
自分の頭にある作品が知られることが怖い。


2月18日

ネットオークションで隕石を落札した。
届いた隕石には注意書きが添えられている。
愛情を持って接してください。何があっても捨てないで下さい。
隕石が届いて三日目、植物の芽のようなものが出てきて、花が咲き実をつけた。
実の中からは妖精のような生き物が。
私は第三種接近遭遇を果たすこととなった。


2月19日

母がニュースを見ながらなにか呟いている。
「オリンピンク?広びーろ?」何のことだか分からない。
テーブルの上には、おやじギャグ大募集のチラシが。
応募するつもりなのか。そもそもおやじじゃないし。
そこのところは全く気付いていないらしい。


2月21日

雪が激しく降るといっても、次々と雪達磨が降ってきて、
あっという間に線路を埋めてしまうとは。しかもこの雪達磨やたらと重い。
焼けになった除雪作業員が雪達磨に向かって「線路側に一列に整列」
と叫ぶと、雪達磨達は速やかに線路側に移動、整列。
これほど楽な除雪作業はなかった。


2月22日

よくアパートのベランダから外を眺めていた。
早朝のまだ街が動き出す前のあの静けさ、少しクリーム色が混ざった
オレンジ色の空、それを見るのが何とも言えず好きだった。
何故か最近よくあの街のあの風景を懐かしく思い出す。
嫌な思い出ばかりしかないあの街を。


2月23日

一週間前には部屋の隅にいた死神は、もう手を伸ばせは届く程近くまで
やってきていた。
「最後に望みを一つ叶えてやる」と言う死神に、
私は「大好きなあの人に思い切りぎゅっとして欲しい」と頼んだ。
すると死神は「もう、君をもらってもいいんだね」と言ってぎゅっと
私を抱きしてきた。


2月24日

空を舞っていた蝶が、僕のところへ下りてきた。
「私、空を飛べるようになったの」と僕の周りをくるくる回ってみせる。
昨日まで芋虫だったはずなのに。
それ に比べて僕の種族ときたら、大人になってもさほど変わらない。
それが悪いというわけでないのだが、時たま自分でないものに
なってみたくなる。


2月25日

頑なで、肩肘を張って生きている君を見ていると、抱きしめて、
思いっきり甘やかしてやりたいと思ってしまう。
甘い言葉を囁いて、君を誘惑したら、少しは俺の言うことを聞いて
くれるだろうか。
そんなことを考えてしまう俺は、君を守る天使ではなく、
堕天使なのかもしれない。


2月26日

また分かれ道だ。どこへ続いているか分からない道を、
迷いながら選び進んで行く。
本当にこの道でよかったのだろうか。激しい不安が私を襲う。
そうだ、もう一度前の分かれ道に戻ってみよう。
すると横に大きな看板が。「Uターン禁止」これまでの人生、
やり直しはきかないらしい。


分かれ道が多過ぎる。何処へ続いているか分からないから、
どちらも選べないじゃないか。
だからブルドーザーを手に入れてきた。
これからは作られた道を行くんじゃない、道を作って進むのだ。
ポンコツにだけはならないよう、要注意だけれど、もう迷わない、
直進だ。