昔、吸血鬼の夢を見たことがある。


吸血鬼として出てきたのは子供の頃から仲良しの

男の子。


森の中を二人で歩いて行くと、彼はいつもと違って

ちょっと先に行ってしまう。


洞窟の入り口のようなところで立ち止まって、振り

向いて黙ってこちらを見つめてくる。


いつもと違う感じに驚いて足を止めた私に


「僕ね、吸血鬼なんだ」


「血、吸わせて欲しいな」と


「エっ」ちょっと待った~

いまサラっと理解し難いことを言われたような。


一緒にカエルを捕まえたり、昆虫採集したりとか、

プールにだって泳ぎに行ったじゃないか。


20年以上親友状態なのに、吸血鬼っていうのは

ありなのか?


怖くはないがパニクッて喋らない、動かない私。


いつの間に側に来たのか、気が付いたら抱きしめ

られていて首筋に唇を寄せられている。


「だから、まだ返事してないって~」

相変わらず声にはならない。


首筋に牙が入ってくるのが分かる。

夢だからか痛くはない。


ただ血をゆっくり吸われているのが分かる。


力が抜けて朦朧となるような気配もなければ、

気持ちいいわけでもなく、嫌悪感もない。


血を吸われている感触があまりにも生々しくて

目が覚めた。



吸血鬼ってよく性的な高まりを表すっていうけれど、

彼が吸血鬼ってそういうことだったんだろうか?


私、彼のことが好きだった?


当時の状況を考えるとそれはないような気がする。


当時は私は別の男の子が好きだった。

でもその彼は私じゃなく別の女の子が好きで、でも

その彼が好きな女の子は別の子が好きっていう状態。


もう、全員違う方向向いちゃってて、どうしよもなかった。


そんな中、唯一、誰が好きなのか私に見当がつかな

かったのが吸血鬼として夢に出てきた彼だった。


恋愛感情がなかったから、血を吸われても何も感じ

なかったのかも?


どうしよもなく好きな人が吸血鬼として夢に現れて

血を吸われたのだら違ったのだろうか。


後にも先にも吸血鬼が私の夢に出てきたのはこの

時だけ。


今度見るんだったら憧れの人で見てみたい。