わたしと本と。 -9ページ目
彼女は夜更けの道を走っていた。
はやく、はやく、
もっと速くー
視界は涙で滲み、
世界の輪郭はぼやけて
よく見えない。
それでも彼女にとって、
そんなことはどうでもよかった。
ただ、少しでも、
速く、速く。
それは背後から
大きな獣にでも
追われているかのように…。
否、
実際は
追いかけられているわけではない。
これはヒトの言葉でいう
「揶揄」
という意味だ。
さて、
何故このおなごが
こんな夜更けに
一人泣きながら
走っているのかを語るには、
このおなごの持っている
三番目に古い記憶まで
遡ろう。

