これまで人の意思決定に影響を与えるものとして、「認知のクセ」と「状況」についてお話してきました。
意思決定に影響を与える大きな枠組みの最後は「感情」です。人は、感情によって判断を左右されてしまう非合理な生き物です。
また、感情が穏やかな時は「認知のクセ」と「状況」ほどの影響は受けませんが、ひとたび揺さぶられると一番影響を及ぼす要因となるほどの力を持っています。
人には喜怒哀楽といった様な大きな感情の変化もありますが、これは相当大きく感情が揺れないと起こりません。もっと簡単に日常的に起こっている感情の揺れを「淡い感情(アフェクト)」と呼びます。
日常生活ではこのアフェクトの方が発生率が高いですし、意思決定に影響を及ぼすことも多いです。なので、まずはアフェクトについて理解することが大切。
そして、このアフェクトには「ポジティブなアフェクト」と「ネガティブなアフェクト」が存在します。
例えば最近話題の自動運転。
自動運転が安全かどうかについて判断する時、検証結果に基づいて安全かどうかを判断する人はごく少数です。多くの人はなんとなく好意的なら「イエス」、ちょっと疑わしいなら「ノー」という判断をします。
つまり、判断基準は思考ではなく、感情です。人の心を動かしたいなら、数字などの情報だけではなく、アフェクトに訴えかけることも大切と言えますね。
アフェクトを間違って誘引しないように、言動にも気を付けないといけません。例えば自動運転の場合、その車に赤は使わない方が良いです。
なぜなら、赤は無視式のうちに「リスク、危険」というアフェクトを与えているからです。ここではクリーンなイメージの白などを使う方がいいですね。
自動運転で最前線を走っているテスラの車にも白が多いのも納得がいきます。
#赤もありますが
また、人間は数字で言われた方がイメージしやすいという特徴があります。
100人中20人と言われる方が20%と言われるよりもイメージが湧きやすいといったようなことです。
これは、正確な意思決定をするプロでもある精神科医への実験でも影響が確かめられました。
実験では精神科医は2グループに分けられ、「患者Aさんはもう退院しても良いか?」という判断が求められます。
①グループには「患者Aさんと同じ症状の患者100人の内、20人が他者に暴力をふるった」
➁グループには「患者Aさんと同じ症状の患者20%が、他者に暴力をふるった」と伝えられます。
その結果、①グループでは、41%の医者が退院を拒否、➁グループでは、21%の医者が退院を拒否するという結果になりました。
具体的な数字が精神科医に「暴力をふるう」というネガティブなアフェクトをイメージさせ、大きな差が出たという訳です。
精神科医ですらこれほどの差が出るのですから、我々一般人は更に気を付ける必要があります。
次の記事では、そもそもアフェクトはどのようにして生まれるのか?アフェクトへの対策はあるのか?についてお話しします。
それでは、良いアフェクトライフを!
#行動経済学 #アフェクト #精神科医 #テスラ #感情 #情動
参考文献
行動経済学が最強の学問である「相良奈美香」