ジョン・ガリアーノ(John Galliano)に代わる新たなディレクターデザイナーの名が正式に挙げられないまま、前回に引き続きパリ7区のロダン美術館の庭園にて発表されたクリスチャン ディオールのコレクションは、約15年の間同メゾンで働いてきたビル・ゲイテン(Bill Gaytten)らによって作り上げられた。
ブランドのイメージとも重なるバラの花をモダンに表現することをテーマにしたショーは全5部に分かれており、各部のドレスがそれぞれ異なる建築家からインスピレーションを受けている。
ファッション以外の分野からヒントを得てデザインを構想することによって、パリの老舗ブランドは新たな技術をオートクチュールの舞台に導入した。
カラーは各部ごとに変化がつけられ、ホワイト・ブラックにパステルカラーを合わせたもの、ブロンズやゴールドなどの光を受けて多色を放つエネルギッシュな色合い、グリーンやブルーなどの自然を思わせるものなど、多彩な色合いが使用された。
バラの花びらをイメージした、ミルフィーユのように幾層にも重ね、縫い合わされたオーガンザやチュール、シルク、レザーなどの生地や、羽などの素材が美しいドレスのフォルムを作り上げてランウェイを華やかに彩った。
また、全36ルック各ドレスの細部に及ぶスパンコールやラメ織物、刺繍まで、決して手の抜かない仕事ぶりはオートクチュールならではの繊細さ。メイクでもアイシャドーやリップはもちろん、眉毛にのせられたスパンコール、マニキュアに至るまでドレスのカラーや装飾と掛け合わされ、一つの作品へのこだわりをみせた。
バラをモダンに表現すべくクチュールの革新的な技術に挑み、新たなエッセンスを見る者の目に焼き付けながらも、ディオールらしい女性のエレガントさを惹き出す、丸みのあるボディーラインに沿った完璧ともいえる美しいドレスのフォルムは健在した。
公式サイト : http://www.dior.com/