杉野学園の織田晃教授が今年1月と震災直後の3月20日、東京・大阪の370人の若者を対象に行ったアンケート調査によると、震災の前と後で明確な変化があったという。
「ひとつのものを大切に使い継ぐ未来」「次々と新しい物が手に入る未来」どちらを選ぶかという質問に対し、「ひとつのものを大切に・・・」を選んだ比率が震災前の62%から震災直後には82%に跳ね上がったというのだ。
http://dns2.sugino-fc.ac.jp/gakuen/research/2011-0629-1736-12.html
震災前の62%という比率も相当に高いと思うが(既に昨年秋頃から衣料品の購入数量が減少して単価上昇に転じていた)、82%に跳ね上がったというのも消費意識の一変を感じさせる。
若者の意識がこんなでは、ファストファッションブームが冷却するのも当然だろう。
織田教授は日本に限らず欧米でもシーズントレンド意識が希薄化しており、次々と使い捨てる大量消費文明の落日は先進国に共通しているのではないかと指摘している。
発展途上を謳歌するBRICs諸国はともかく、先進国は何処も財政的に行き詰まりつつある。
ギリシャやポルトガル、アイルランドに続いてイタリアやアメリカも信用不安に襲われ、債権国たる日本とて国家財政は破綻寸前だ。
資源にも借金にも限りがあるから、これまで謳歌して来た大量消費文明はもはや継続が困難で、皆で物を大切に使う清貧な生活へと文明の質を転換せざるを得ない。
実際、欧米では、すべての分野でダウンサイジングがトレンドとなっている。
未曾有の大震災に打ち砕かれた日本人は第三の敗戦的諦観に目覚め、急速に消費スタイルを変質させつつあるのではないか。
戦後復興期風ルックが広がりトリスが再評価される今、50~60年代的質素さどころか江戸時代的リサイクル文明へのオマージュが広がりつつあるのかも知れない。