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山口 芳明 の奮闘記

JR大阪三越伊勢丹の絶不調ぶりを見て、阪急や大丸とすみ分けしてセレクトショップ複合型ハイブリッド百貨店(大丸梅田店は駅ビル系OLブランド複合型ハイブリッド百貨店)を目指せば良かったのにと以前に書いたが、それは日本の百貨店の本質的な課題だと思われる。


日本のファッションリテイル勢力は百貨店と駅ビル/ファッションビル、セレクトショップとSPAだが、欧米には駅ビル/ファッションビルはほぼ存在しないし、セレクトショップはバーニーズを例外として好事家のためのマイナー勢力に留まる。


米国ではその代り、セレクトショップ複合体的スペシャルティ・デパートメントストアがアパーマーケットを広くカバーしている。

ノードストロムやニーマン・マーカス(バーグドルフ・グッドマンも同社経営)、サックスフィフスアベニューがそれで、ニーマンやサックスはハイファッションストアとも呼ばれる。

これらスペシャルティ・デパートメントストアは独自に国内外のブランドを買い付け、洗練された売場環境とVMDで、ほぼ神話の域に達した接客サービスを顧客に提供している。


その調達手法と提供方法はセレクトショップそのもの、いやもっと洗練された商業文明の華かも知れない。

この三社合計の店舗数はフルライン店だけでも205、総売上は162億ドルに達するからまさしく一大勢力であり、米国富裕層の厚みを実感させる。

彼等こそ、世界のコレクションシーンを支えるビッグバイヤーなのだ。

彼等に較べれば、日本のセレクトショップなどグレード感やスケールはもちろん、コレクションブランドの買い付け量も桁が違う。


ユナイテッドアローズ、ビームス、シップス、トゥモローランド、ベイクルーズグループからアーバンリサーチ、ナノユニバース、パルグループまで合算しても総売上は約3600億円と米国三社合計の三割にも満たないし、米国三社のような成熟した大人の文明とは懸け離れている。

本来、このスペシャルティ・デパートメントストアの役割は百貨店が担うべきだったが、日本の百貨店は委託消化取引に埋没して自己リスクでの買い取りも独自の売場運営も接客サービスの神話も確立出来ず、退化と衰退の一途を辿った事は言うまでもない。


だからこそ、若者文化から発したセレクトショップが曲がりなりにもその役割を分担して一大勢力となっていったのだ。
セレクトショップは百貨店が放棄した市場で成長した鬼っ子であり、駅ビル/ファッションビルがセレクトショップ群を中核に勢力を拡大する今日、その取り込みは百貨店生き残りの一つの選択枝として無視出来ないものとなった。


三越伊勢丹など、セレクトショップ複合型ハイブリッド百貨店を真剣に模索しても良いのではないか。

あるいは、大手セレクトショップの中からノードストロムのようなセレクトショップ複合型スペシャルティ・デパートメントストアに発展する企業が出て来るのかも知れない。