プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスのファーム(2軍)、あるスタッフの話。
震災時、チームは関東に遠征中だった。
交通機関の影響もあり、本拠地の仙台に戻ることができないまま、先月19日、ファームは開幕した。
多くの選手と同様、このまま野球を続けていいのか、と悩んだ。
一方で、被災球団として、今こそ野球を通して東北に笑顔を取り戻したい、とも思った。
相反する思いが交錯した。
シーズンの開幕後、彼が驚いたのはベテラン選手の姿勢だった。
開幕に戸惑いを見せていたにもかかわらず、率先して黙々と練習に励んでいる。
さまざまな葛藤の中、自分が今できることに全力で取り組んでいる。
彼自身も自分の仕事に徹した。
災害対策本部から被災地に派遣され、救援活動を行った大阪の青年。
救援物資を届ける先々で、自ら被災しているにもかかわらず、友を励ましながら1歩でも前へ前へと進む人に会った。
「自分のことだけでも大変なのに……」
その姿に、何よりも彼自身が励まされた。
“何かしたい”との思いは、皆、共通している。
大切なことは、その思いを忘れないこと。
そして、自分の今いる場所で、勝利の旗を打ち立てることだと思った。