「世の中を変えるのは人であり、人を変えるのは教育である」との信念に基づき、画期的な改革を成し遂げた自治体がある。
韓国の長城郡だ。
新たな時代を開く一つのモデルケースとして今、注目されているという(趙佑鎭・梁炳武編著『奇跡を呼びこむ、人』悠雲舎)。
「規定にありません」
「慣例にありません」
「予算がありません」
……
長い間、それが公務員の口癖だった。
改革により、そうした事なかれ主義は一掃され、住民奉仕の行政が実現した。
原動力となったのは「長城アカデミー」と名付けられた週1回の講演会。
一流の講師を招き、およそ日常業務や地域生活とは直接関係のない質の高い教育を提供する。
聴講するのは公務員と住民たち。
暮らしと政治は、自ずと大きく一変した。
この試みが、松下幸之助を手本としている点も興味深い。
「松下電器(現・パナソニック)は最高の製品をつくる場所ではなく、最高の人をつくる場所」との経営哲学に学んだという。。。
「社会のための教育」でなく、「教育のための社会」を――
組織のための人材育成ではない。人材育成それ自体が、社会をひらきゆく。
人を育て、未来を託す。それは「人間」を、とことん信頼する運動でもあるだろう。