そして着いたときに歌っていたのは、百瀬あざみ。きれいな声のギター弾き語り。
女性ギター弾き語りシンガーは沢山いるけど、彼女のように純粋なフォークな曲を作り、歌える歌手は現代では希少。まだ若いのに(笑)。といっても60~70年代の反戦とか社会の行き詰まりがテーマではなく、その詩は内向的。そこが現代的と逆に言えるのかな。
服部祐民子という僕らに近い世代のギター弾き語りのシンガーソングライターがいる。拝郷メイコや神山みさらよりも勿論上の世代だ。その彼女の代表曲のひとつに「幸せになりたい」という名曲がある。その歌のサビはこうだ。
むしゃくしゃして人を殺し、たかがすまんで人を刺し、親が子を突き落とし、子供は親を殴り殺す。幸せって何なんだろう、きっと温かいものなんだろう、いつか感じたはずなのに、どうして薄れてしまうんだろう。みんな幸せが欲しいんだよ~
これが、心に突き刺さる。抜粋した歌詞はほんの一部で、この後もものすごい波状攻撃のような言葉が、次々とたたきつけられ、打ちのめされる。音楽をやっていくうえで、何を媚びる必要があるというのか。今となっては古めかしいかもしれないが、これがフォークソングの力だ。
矢野絢子、いわさききょうこ、倉沢桃子など、そんなフォークの力を受け継いでいると思うアーティストはいる。菅田沙江は少し違うか。百瀬あざみにも、もっともっと攻めて欲しい。フワフワとゆるい空気を作るだけでは、僕は物足りない。彼女ならできる、そんな才能を感じるから。
この後、「スポンジみたいな」という男性4人組(2人+サポート2人)が登場。格好よい音楽なのだが、ドラムボーカル小林ジョーの声が素人っぽい。もっとボーカリストとしてのプロの声を作って欲しいなあ。この声では、もの足り無さすぎ。
続いて登場したのが「つるうちはな」。ある意味、彼女のぶっとびぶりはスゴイ。でも、うーん。高過ぎるテンションと破滅願望が同居しているような感じが惹きつける。ピアノの早弾きの腕前もなかなかだし、楽曲にセンスがある。「百年歌」とかいい曲だ。そのうち化けるかもしれない---だが、どこに向かってるのだろう。タバコ吸って、酒飲んで、声を枯らしながら、ポップな音楽をやりたいのだろうか?
トリで登場したのが「ヒグチアイ」。
彼女のすごさ、もう、あまり語る必要はないか。その圧倒的な歌力、プロのアメフト選手がタックルしてくるようなど迫力(笑)、力強い鍵盤の音。それでいながら、最近は表現の幅がぐんぐん広がっていてバラードや、アカペラまで圧倒的な存在感を放つステージは見事だ。
1)ココロジェリーフィッシュ
2)START
3)さよなら、愛しき人(だったかな?君とそのままだったかも)
4)マッチ
5)永遠のウオーカー
en. アカシ
昼間にiPhoneでヒグチアイの「START」を聞いていて、久しぶりに聞きたいなあと思っていたら、実際に2曲目に歌ってくれたのでゾクゾクした。こんな難しい歌を高校3年生の時にストリートライブで歌っていたというのだから驚き。今日は久しぶりということで、少し気負い過ぎた部分もあったのか、この曲のドラマがうまく表現しきれていなかったかもしれないが(笑)
そして、やはり「永遠のウォーカー」は、彼女の圧倒的なパフォーマンスを遺憾なく示す代表曲に今夜もガツーんときましたねえ。言葉では説明できないけど、そのインパクトはライブハウスで聞くことで何十倍にもなる。聞いたことない人は、ぜひぜひ彼女のライブへ行こう。
この日の鉄平さんイベント「鉄ロックフェスティバル」は、ラストのアーティストにもアンコールはなしが通例となっているようですが、この日は鉄平さんみずからアンコールのお願い。ヒグチアイ自身もアンコールは考えていなかったようで、「どの曲がよいですか」とお客さんに聞いたが、客席の答えは当然のように「アカシ」。
アカペラでワンコーラスを歌いきるのだが、その声にしびれる。鳥肌がたつ。骨の髄にまで響いてくる憂いをおびた力強い声の前に、すべての色も存在も消え失せる。ただ彼女の声だけが頭に響く。すごいよ。感動的だった。今年は彼女の年になるような、そんな気がします。