蒼い鳥 ある日の風景 その2 3/3 | iM@Sとかなんとか(仮)

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アイドルマスターSSとか駄文をのっけてます。←とか書いてても、ちっとも更新していないので「サイドストーリー」と言うタイトルはは取り下げました。最近のメイン記事はニコマスの紹介記事が9割を締めています。

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 漏れ聞こえるピアノの音に、ノックの手を止めた。
 耳を澄ましてみる。これは、あずささんの……。

   空にだかれ 雲が流れてく 風を揺らして 木々が語る
   目覚める度 変わらない日々に 君の抜け殻探している
        『隣に…』作詞:貝田由里子 作曲:NBGI (椎名豪)

 なんて澄んだ声……。わたしはドアの前で、千早ちゃんの唄う『隣に…』を、黙って聴いていた。そしてピアノが最後の伴奏を奏で終えた時、そっとドアを開いた。
「天海さん?」
「千早ちゃん……」
 千早ちゃんは少し驚いた様子だった。
 なにを言えばいいのだろう。わたしは、なにを言おうとしたのだろう。心はたくさんの気持ちで溢れているのに、千早ちゃんを目の前にして、その気持ちは今にもこぼれ出しそうなのに、どこにも言葉が見つからなくて。
「ここを使うの? わたしはもう終わるから、どうぞ?」
 なにも言えなくて、わたしはただ首を振るばかりで。
「どうしたの?」
 どうしようもないわたしは、気が付いたら千早ちゃんの袖口を掴んでいた。
「天海さん……。心配、してくれるの? ありがとう。でも、もう大丈夫よ。吹っ切れたわ」
 そう言って千早ちゃんは、わたしの手を握りかえしてくれた。
「そうね。ショックだった……。だって、ずっと憧れていたんですもの。あずささんの唄が好きで、好きで、いつかわたしも、あんな風に唄いたいってずっと思ってた。今でも。でも、あずささんがしあわせになるのなら、よろこばなくちゃいけないでしょ? わたしも、いつまでもあずささんに甘えてばかりじゃいけないし。突然だったけど、良い機会だったのよ」
 手のひらに、千早ちゃんの気持ちが伝わって来る気がした。こんな時でも、あなたはそうやって笑うんだ……。
 そう思ったら、
「千早ちゃん!」
「な、なに?」
「わたし、あずささんを呼んでくる!」
「え? な、なにを言っているのよ、あずささんは今……」
「いいから、ここで待ってて!」
 わたしは一気に駆け出した。プロデューサーさんに連絡を取って、あずささんが何処にいるのか教えて貰おう。一杯、一杯怒られるだろうけど、構うもんか。
 そうしてドアに手を掛けようとした時、
 スカッ。
「へ?」
 ノブを掴むはずだった手は空回り。バランスを崩したわたしは、
「わたっ! どんがらがっしゃーん☆」
「あ、天海さん!?」
「あいたたたた……」
「あらあら、大丈夫? 春香ちゃん」
 え?
「え……」
「あ……」
 そこには居るはずのない、来るはずのないあずささんが、少し肩で息をしながら立っていた。
「あずさ……さん。どうして……」
「ん~~、どうしてかしら~」
「そんな……、だって……」
「千早ちゃんに会いたくなったから。じゃ、いけない?」
「いえ、でも……」
 千早ちゃんの目からは、次から次から、涙がこぼれ落ちていた。
「千早ちゃん」
「あずさ……さん……」
「はい」
「わたし……、わたし…………。う……うぅ……うわぁぁぁ~~~ん」
 千早ちゃんの泣き声が、部屋の中に響き渡った。あずささんは、そっと、千早ちゃんを抱き寄せた。
「わ、わたしの、大切なものは、みんなわたしから離れて……ひ……いく……。弟も、家族も、あずさ……さん……も……ひっ……うわぁぁぁ~~~ん……うわあああぁぁぁああ~~~……」
「なにを言ってるの~。わたしは、千早ちゃんから離れたりはしないわ。ずっと、わたしはわたしよ。プロデューサーさんも、春香ちゃんも」
「あずささん……グスッ……」
「はい」
「あずささん……、あずささんあずささんあずささん!」
「はい。ここにいるわよ」
「うわあああぁぁぁああ~~~……」

 二人に気付かれない様、わたしはそっと音楽室を出た。ドアを閉めたわたしの背中に、
「やれやれ、だな」
「プ、プロデューサーさん?」
「なに泣いてんだよ、このドジッ娘」
「だ、だって……。━━━そういうプロデューサーさんだって、ちょっとウルウルしてるじゃないですかぁ」
「バカお前、これは、アレだよ。外が乾燥しててだなあ」
「ふふふ。ねえ」
「ん?」
「プロデューサーさんが、あずささんを連れて来てくれたんですか?」
「そんなわけあるか。俺がホテルでチェックインの手続きしてる間に、あずささんは迷子になったんだよ」
「えええええ!?」
「それで携帯で連絡取ったら車に乗ってる感じがしてさ。なんとも要領を得ない返答しかしないんで、もしやと思って事務所に戻ってみたら案の定、というわけだ」
「な、なんか凄いですね……」
「エスパーか、あの人は」
 いえいえ、そう言うプロデューサーさんだって。
「まったく……、この大変な時に。後でお説教してやらないと」
 そう言うプロデューサーさんは、ちっとも怒ってなくって。そしてちょっとだけ、嬉しそうで。
 みんな、気持ちの何処かで繋がり合ってるんだよね。でも……。
「なんだ、どうした?」
「いえ、なんか、わたし一人で空回りしちゃったのかなって……」
「バ~カ」
「あー、ひどい! わたし、これでも少し気にしてるんですよ?」
「空回りだなんて、そんなこと言うなよ」
「でも!」
「千早がまた寂しがる」
「あ…」
「だろ?」
「……はい!」
「ほら、お前も今日はもう帰れ。学校もあるし、明日も明後日もレッスンがあるんだろ。千早のことは、大丈夫だから」
「はい!」

 千早ちゃん。
 これでちゃんと、おめでとうって、言えるね。
 良かったね。
 本当に、良かったね。


蒼い鳥 その4