こちらあいにの妄想短編です
ご注意ください
第6話。最終回
ゴーーッ
飛行機の飛び立つ音がする。俺ら二人の間は無音で、固く結ばれた手は道を行く人の目に晒されているけど、もうそんなことはどうでもいい。
搭乗手続きを済ませて、椅子に腰掛ける。
付き合って約2年。こんなに早くアメリカに帰ることになるなんて、ね。
カズは何とか日本に残れないか打診したみたいだけど、最低でも1年は帰って来れないって。泣きながら2人のこれらからを決断したあの夜を、きっと俺らは忘れない。
(A航空ニューヨーク行き617便はただいまから8番ゲートよりご搭乗いただきます。)
時間は残酷にも時を刻み、搭乗アナウンスがかかった。
ポタ……ポタポタッ
固く強く握った左手に、カズの涙がこぼれる。
目を赤くうるませて、唇を強く噛んで嗚咽をこらえるカズの顔を手で優しくすくって、キスをした。
「ッ……ま、くん。好き。ずっと好きだよ。」
こんな風に泣いている恋人がいるのに、人目を気にしてる暇はない。ぎゅぅーっと抱きしめて、肩にカズの顔を埋めさせる。
肩口が湿っていくのも、好奇の目で見られることもなんにも気にしない。耳元でずずっと鼻をすする音が聞こえ、カズが顔を上げる。
泣き笑いの顔で俺の目を見ると、深く息を吸って。
「じゃ、いくわ。」
最後まで見送られると寂しくなるって言うから、ここでお別れ。
「まーくん。I was born to love you.……」
チュッとリップ音がして、唇に柔らかい感覚。
去っていく猫背の後ろ姿が、涙で滲んで見えなくなった。
馬鹿な俺でもわかる。おれも、カズを愛するために生まれてきたんだよ。
完。
あとがきなどはまたあした!