(あー、あー・・・、)



声が出ない。

喉が潰れたようだ。



(よいしょ、)


(・・・あれ?)



手足が動かない。

折れてしまったようだ。






『カレーでお待ちのお客様』


(なんだ、この匂いが一切ないカレーは?)


違った。

鼻が使いものにならない。

鼻炎ではないらしい。





ピピピ、ピピピ


(目覚まし、目覚ましっと)


(?)


(此処は、何処?)





目がやられてしまった。

僕の目には何も写らない。






唯一残ったのは、

この耳だけ。


光と


匂いが


分からなくなったが、



声と



運動が



出来なくなったが、




この耳さえあれば



君は分かる。


君を感じる。











遂に、



その時はやって来た。










何も見えない。


何も聞こえない。



大好きな


君の姿が。




君を見失った。



探したいけど、

僕の手足は使えない。


なら匂いを辿って、


駄目だ、

鼻は謎の鼻づまり。



何も出来ない。




僕は僕をも失いそうだ。








頬に生温かいものを感じたときだった。



身体に重みを感じたのは。




知ってる、


この体温。


この心音。





僕が、


愛してやまない人。






人生最大の想い人に、僕は抱き締められながら



人生最大の幸せを、僕は全身で感じながら



人生最大の笑みを、僕は浮かべて




人生最後のキスを交わした。








この日、僕は死にました。








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