お笑い芸人カラテカの矢部太郎さんのエッセイ漫画が単行本になりました。

   『小説新潮』に連載中からお父さんの絵本作家、やべみつのりさんからその漫画のコピーが送ってきていましたので、

   その面白さに家族中ではまっていたものです。


          


          

   
    6年前に取材したときの記事の最後に「次はどんなことに挑戦してくれるのか、期待しています」と書いたのですが、

    こんなステキな漫画に挑戦して、ますますのマルチな才能発揮ですね。

    一軒家の2階を借りて住む矢部太郎さんと、1階に住む87歳の大家さんとの日常を描いた漫画。

    この二人の会話のギャップと間(ま)がまず面白いです。

    いつも「ごきげんよう」と挨拶する上品な、一人暮らしのおばあさん。

    2人の距離が近くなったのは、毎月家賃を手渡しすることから。

    その度に大家さんがお茶に誘い、矢部さんは昔の話を聞き、おばあさんのことを知っていきます。

    私は「これだ!」と思いました。

    家賃振り込みでは生まれないコミュニケーション、大家さんと店子には人と人とのつながりが昔はありましたよね。

    近くに住んでいても、いつも挨拶のみではその人のことは分かりません。


           

    大家さんの好きな伊勢丹のレストランでランチをしたり、「死ぬまでに一度は行きたい」と大家さんが言っていた鹿児島県の知覧まで矢部さんは連れて行きます。

    知覧特攻平和会館、指宿の砂風呂、これらはこの3月に私が孫連れで行った場所でもあります。

    2人の時折ズッコケながらもお互いを思いやる気持ちが、ほっこりと心温まります。

    絵のせいもあるでしょうが、2人とも本当にいとおしくなるほど可愛いです。
   
    矢部さんの自然体の優しさ、繊細さに、この人は両親にとても愛されて育ったのだろうと想像します。


    はるか昔の学生時代、私も大家さんの敷地に建てられた平屋のアパートに住んでいた頃を思い出しました。

    5部屋のうちの1部屋はおじいちゃんの昼間の隠居部屋になっていて、よく昔話を聞いたものです。

    母屋の息子さん夫婦にもおまつりや潮干狩りに連れていってもらったり、本当にお世話になりました。
  
    今でもお名前も顔もはっきりと憶えています。


    これからの世の中はますます独り暮らしの高齢者が増えていきます。

    矢部さんが一つ屋根の下に住むようになって、兄弟を亡くし落ち込んでいたおばあさんが元気になったそうです。

    広い家に住む独り暮らしの人は異世代交流のために、空き部屋を活用してもらいたいなあ。


    ゲラゲラ、クスクス笑えて、なんだか教えられる・・・おすすめの本です。


    『大家さんと僕』新潮社発行 ¥1,000(税別)