母親を捨てようと決めた。

もう、あんな親の顔色を見ながら生きるのは嫌だ。私は私の人生を私のために生きたい。

そう思った。


そう思ったのに、親を捨てると決めたのに、そう決めた途端、私の頭の中に浮かんでくるようになったのは、数少ない母親とのいい思い出だった。


優しくしてもらえた時のこと、笑顔を向けてきてくれた時のこと…


今まで、全く思い出さなかったのに、嫌な思い出の方が圧倒的に多いのに、なぜだか母親との数少ない幸せな記憶が、私を縛りつけ始めた。


そんな幸せな記憶を塗りつぶそうとしてるのか、更に辛かった記憶もよりリアルに思い出すようになって、私は親を捨てると決める前よりも、もっと辛くなっていった。