※ご注意くださいませ!!
この前も書きましたが、原作を読み返している時間が無いので、原作の内容がうろ覚えのまま書いています。例えば、『ラブミー病』は誰が使った言葉か、とか、『ラスボス』は誰が使った言葉か、とか。わかりません。なので、多々おかしい点があると思います。
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恩を仇でかえした自分は、一刻も早くここから消え去るしかない。さあ、泣いてしまう前に最後の挨拶を。
そう思ったキョーコは、ザッと、きをつけの姿勢になった。
「今まで後輩として可愛いがっていただきありが「♪♪♪♪~~~~~」」
携帯から流れるメロディに、キョーコの言葉は止まってしまう。
(こ、こんな時に電話…………………………?まずはこの部屋を出て、)
「…………………………出ないの?」
蓮が、まだぼんやりとしたまま声を発した。
「はは、は、いっ、今すぐ外にっ」
「…………まった!!違う!電話に出てってこと!」
「………え……………」
「『外に出ないの?』じゃなくて、『電話に出ないの?』ってこと。ほら、早く。鳴り続いてるよ。」
ここで電話に出るの?そんな状況では………とキョーコは思いつつも、蓮に追いたてられるように携帯をかばんから取り出す。
「……………………………ぁ、社長さんだ………。…も、もしもし……………」
『最上君、合コンお疲れ様。』
「…………はい、お疲れ様です。おかげさまで、無事に完遂致しました……………。」
『そう。よかったね。で、蓮のやつには告白したのか?』
「……………!!!う、ぃ、あの」
『その様子だと、もう一緒にはいるのかな?実はね、この前、君に大事なことを言い忘れていたことに気づいたんだ。』
「は、はいっ?」
『いいかい?君が用意するのは、蓮を失う覚悟じゃない。……………「蓮に愛される覚悟」、だ。』
「…………………………へ、」
『まー、わりと大変だから、心の準備だけはしておいてもらおうと思って。』
「………………………………………へ?」
『……………もし、蓮が近くにいるなら、かわってくれ。』
「………ああ!は、はいっ。敦賀さんっ、社長さんがかわってくれって……………」
「ぇ、俺に?……………もしもし?」
『今から俺が言う言葉を、よく聞いておけ。……………いいな?最上君は、まだ完治にはいたっていない。治すのはお前だ。……………逃がすなよ?』
ローリィはそう言うと、一方的に電話を切った。
「………………………。」
固まる蓮を前に、キョーコも固まった。
キョーコは、社長の言葉の意味は全くもって解読できなかった。なので、すぐに無意識下にほおってしまったのだ。それよりも、キョーコは蓮に最後の挨拶をしたい、携帯電話も返してもらわなければならない、と思う。耳に携帯を当てたまま動かない蓮に、キョーコはどうしたものかと、「あ、あの……………」と声をかけた。
蓮はそんなキョーコに、スルスルと視線を移す。
「……………夢じゃ、ない。」
ようやく、携帯電話をゆっくりとした動作で下ろした蓮は、急に表情を取り戻すと、くすくすとそれはそれは幸せそうに笑った。
次いで、スーパー神々スマイルを炸裂させると、「逃がすわけなんてないでしょう……………ボス。」と呟いたのだ。
「…………ふ…へぃぃ〰〰!!!?」
この1年。神々スマイルをしょっちゅう浴びせられていたキョーコだが、今はこれっぽっちだって予想していなかった。しかも、ただの神々スマイルではない。『スーパー』なのだ。その衝撃に、キョーコは完全に目を眩ませてしまった。
「最上さん。」
そしてキョーコがしばしもんどりうって、その蓮の声にハタと気づくと、蓮がリビングの前で手招きをしている。
「これ、返してほしいよね?」
キョーコの携帯をフリフリと、掲げて見せる。
「……………あ、」
「……………こっち、おいで?」
「へ!……………ぅ……………と、」
「大丈夫。手順は踏むよ。……………おいで?」
なんか、違う。
キョーコはそう思った。
色々、違う。
キョーコは、そうも思った。
自分は、怒りをかい、蔑まれ、ここから追い出されるはずだったのに。
『そこ』には、蓮のプライベート空間には、二度と入れてもらえないはずだったのに。
「……………カフェオレ?紅茶がいいかな。」
飲みものを用意してくるからリビングで待っていて、と、蓮はキョーコの携帯を持ったまま、キッチンに消えてしまった。
帰るべきなのだろうけれど、帰るわけにはいかなくなったキョーコは、そろそろとリビングに入り、所在無いままにソファに浅く腰かけた。
今から何が始まるのだろう?
社長は蓮に何を言ったのだろう?
私は、ここにいてもいいのだろうか?
キョーコは混乱しながら、俯いて小さくなり、蓮を待った。
「そんな『ちまっ』てなっちゃって、抱き締めてほしいですってサインなの?」
そのご機嫌な声に、キョーコは反射的に顔を上げる。リビングの入り口に蓮がトレーを持って立っていた。
「え!!!ぃ、ぇ!」
キョーコは、やはりその場に固まった。
蓮はクスクスと笑いながら、カフェオレをテーブルに置く。
「…………………………うはっ!!?」
いつもは向かいに座る蓮が、なぜかキョーコのすぐ真横、しかもぴとりと隙間なく腰をおろしたので、キョーコは『心の中で』そこから飛び退いた。実際は、蓮がキョーコの腰を優しく、しかしガッチリとホールドしたので、動けなかったが。
「……………抱き締めてほしいの?」
「……………だぅ!!……………ぅぅ、、、と」
「俺は抱き締めたいけど。」
「……………!!!、それは……………」
「ふふ、全身真っ赤だね………、可愛いな……………。すごく緊張してる?」
「……………、ど、とうしたしたもんか、と、……………」
「………くすくす……………ああ、俺……………我慢して、最上さんのそばにいた甲斐があった。」
「……………?」
「そう。我慢したんだ………『男の顔』を出すことをね……………。」
「…………………ぇ、と……………?」
「我慢するしかなかったよ。だってね、俺は、最上さんの心がほぐれてきた時に一番近くにいる男でありたかった。そのためには、心の傷の癒えていない君に、危険人物として敬遠されるわけにはいかなかったんだ。ただ、そのためだけに我慢していたんだよ。」
「な、んで……?」
「……………だって……そしたら、また恋をしてもいいかもと思いはじめた最上さんが、よその男にさらわれるのを止められるだろう?」
「…………………………そ、そんな、よその男、なんて、」
「うん、……………絶対に譲れないよね。」
「……………ぇっ、と、」
「だから、男としてそばにいることは耐えて耐えて耐え忍んで。……………でもまあ、先輩としてではあるけれど、最上さんとデートもできたし、君の作ってくれたごはんもたくさん食べられた。……………こうやって……………着飾ることもできた。」
蓮はそう言いながら、ワンピースの胸元のビジューを指でスルリとなぞる。
「ひやぁふっ、」
「うん、いい反応…………。」
「〰〰〰〰〰〰っ!」
いつの間にか、妖艶な光を宿した視線でキョーコの体のラインをなぞりはじめた蓮に、キョーコは目を回す寸前だ。
「…………それでもね、やっぱりどうしても。そういう、女として反応してくれる最上さんが見たくなるんだ。そういう最上さんに触れたいんだよ……………。ただの先輩後輩の関係じゃ、もうだめなんだ……………。」
「つる、がさんっ、」
「うん、ごめんね、もう待ってあげられない……………。最上さんが、好きだから。」
「……………っっ!!」
「好きだよ、好きだ。ずっと大好きだった。」
「……………つ、る……………」
「こうして君に触れたかった……………。」
蓮は、キョーコの頬と後頭部にそっと手を添えると、優しく、でも逃がさないような強引さで、キョーコの唇を、自らのそれで覆った。
「……ん、……………ふ……………っ」
蓮は、しばらくの間ゆっくりとキョーコの唇を喰んだあと、そっと唇を離した。そしてそのままキョーコを抱き締めようとしたが、それは叶わなかった。
キョーコの掌で胸を押され、二人の間に隙間ができてしまったから。
「……………最上さん?」
蓮とキョーコが『両想い』だという事実が判明した。蓮はそれが嬉しくて、想いのままにキョーコに触れた。何より、いかな純情なキョーコでももうすぐハタチ。このくらいの接触は受け止めてくれるだろうと思ってのことだった。なのにキョーコに行為を止められてしまい、蓮は戸惑う。
「この手は……なあに………?」
「……………ですか?」
「え?」
「いいんですか?私はあなたを好きになってもいいんですか?」
「……………え?」
キョーコの半泣きな顔から発せられた疑問に、蓮は、鳩が豆鉄砲をくらったが如く、ただ驚いた。