「蓮様は紳士でないとイヤ!女性に乱暴なことはしない優しい殿方なのよ!」という方は、Back please.なのでございますm(_ _)m

OKな方だけどうぞなのでございまする

私の大好きな、プッツンキレた蓮さん…



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「京子ちゃんっ!大丈夫!?……じゃないよね…。ごめん…。」

「あ、辰野さん…本日はお招きいただきまして…。」

慌てて駆けつけてきた、主催者の俳優…辰野に、キョーコはとりあえずぺこりと挨拶をする。

「すみませんすみません!本当に申し訳ございません!」

そんな二人の横で、業者の男性はひたすら平謝りだ。

「あ、の。こ、この水は先程汲んだ水道水ですので、薬剤や洗剤などの混入は「当たり前だろう!そんな危ないものが入ったものをゲストが通る通路に置いておくなんてことがあったら、それこそ訴訟ものだ!」

業者の男性の顔色がさらに悪くなる。

「あ!の。辰野さんっ。ま、まあ。その、怪我とかはないですし…。穏便に…しませんか…?」

キョーコは、顔色悪く謝罪を繰り返すイベント業者の男性が気の毒になって、辰野の剣幕に押されながらもフォローを入れてみる。

キョーコの提案に少しだけ興奮が落ち着いてきた辰野は、改めてキョーコに向き合った。

「本っ当にごめんね。この埋め合わせは必ず!
あ、うちのお手伝いさんが、タオルとか準備してくれてるから、とりあえず家に入ろうか。えと、図々しくも確認だけれど、それってもしかしてうちへのお土産、なのかな?」

「そ、うなんですけど…あの…グチャグチャかも…」

キョーコはしょぼしょぼと答えた。

「いや、いいの、いいの!全然大丈夫!ありがとう!ほんとごめんね、せめてそれ、持つよ。」

キョーコの持っていたお土産の箱を、辰野が手に取った時、

「うわ、どうしたんスか!」

驚いた男性の声が響いた。

キョーコが振りかえると、そこには絶賛売り出し中のアイドルの男性が驚いた顔で立っていた。

キョーコ達が立っている石畳には、それに沿うように垣根があった。キョーコからはわからなかったのだが、その垣根の裏には一団体いたようで、騒ぎを聞きつけて「なんだなんだ、どうしたどうした」と、ゾロゾロと顔を出してきたのだ。

男女10人程で…その中に、蓮がいた。

蓮は、蝶のようなヒラヒラと華やかなドレスを纏った女性達に囲まれていた。いずれも名の知れた女優やモデルだった。


「お騒がせしてすみません。お楽しみのところ、驚きましたよね?あ、彼女は、当方が招いた業者の手落ちで水を被ってしまって…。タレント兼女優の京子さん。私が先程話していた、ぜひ皆さんに紹介したいと話していた方です。」

辰野はその場でキョーコを軽く紹介する。それから蓮に視線を合わせると、ニコニコと笑った。

「彼女の服装は、今日の撮影の衣装なんだ。俺が、ぜひ着てきてほしいってねだっちゃって。敦賀君は…俺の記憶によると、ダークムーンで京子ちゃんと共演したはずだよね?ということは少し面識はあるってことか。」

そう言いながら鷹野は、自らのハンカチで、キョーコの濡れてしまった髪を一房つかんでトントンと拭いてくれる。キョーコの伸ばした髪の毛は、役に合わせて緩く巻いてあり、バケツの水を被って滴がしたたり落ちていたのだ。

「綺麗な巻き毛も濡れちゃったね。」

キョーコは、「すみません、ありがとうございます。」と小声で謝った。

「いやいや、完全にこちら側の落ち度なんだし。さ、家の中に行こう?なにか君に合う衣装をみつくろうよ。

皆さんは、引き続きお楽しみくださいね。」

辰野は優しくキョーコに話しかけて、先導した。




キョーコは、蓮が目の前に現れてから気分が沈んでいく一方だ。

(ああ、敦賀さん、またこんなに綺麗な人達に言い寄られて。私なんか濡れ鼠で…。こんなみっともない姿、見られたくなかったな…。)

キョーコは、自身の濡れそぼった姿は、蓮にとって汚点だろうと思った。

その目が「信じられない!なんて格好なんだ!」と言っていたから。

そしてキョーコは、蓮の尋常ではないイラつきも感知していた。

『彼女は同じ事務所の後輩で、将来有望なんですよ。私が目をかけて育てているんです。』

蓮に、パーティー会場でそんな言葉で紹介してもらえたなら。キョーコのそんな夢は、儚くも砕け散った。

キョーコは、蓮に恥をかかせたくない一心で、あまり関わりのないふりをしなければと思いつつ、完全に無視をするわけにもいかず。本当にチラリと軽く目線だけを下げる。会釈のつもりだった。同じ事務所とはいえ、元共演者以上の知り合いだと思われても困るはずだから。

キョーコは、自身の視線の会釈に蓮がさらにイライラしたのが、即、空気でわかった。すぐに「視線を送ってしまってごめんなさい」と謝りたかったが、それはもう完全に迷惑でしかない。打つ手が無くなったキョーコは、目線を落としてただその場にじっと立っていた。

そして視界の端で動く影。蓮は辰野に話しかけられたあと、サッとどこかへ行ってしまった。

寒い。とキョーコは思った。常ならば心地よいはずの春の風。気化熱を奪われはじめて…寒い、とても寒い。と。

(ああ、早くここから帰りたい。ここは、まだ私のレベルの人間がいるべき場所ではないんだ。彼の在るべき華やかな世界なんだ。早く消えていなくなりたい。)

『タオルも着替えも要らないので、ここで失礼します』と辰野へ言おうと思い、口を開きかけたけれど、キョーコの言葉は音にはならなかった。

突然、視界が真っ暗になったから。

キョーコは一瞬戸惑ったが、ふわりっと大好きな匂いが香ったのですぐにわかった。蓮の大きなジャケットに頭からスッポリとくるまれていたのだ。

「さすがにこの格好では、パーティーへの参加は無理だよね。インナーも全部脱がなくちゃだし、他人(ひと)様の家ではちょっとね。」

蓮の優しい声が図上から降ってきた。キョーコは、蓮がかなり至近距離にいるのがわかる。

蓮は、蓮の言動に驚いて突っ立っている辰野に、朗らかに、そしてとてもよく通る声で話しかけた。

「すみません、辰野さん。私も彼女もここで失礼致します。連れて帰って、お風呂で暖めてあげたいので。本日はお招きいただきありがとうございました。また落ち着いたら、改めて連絡しますね。」

蓮のあられもない発言に、女性陣からは小さな悲鳴が、男性陣からは息を飲むのが、キョーコの遮られた視界越しにも空気で伝わってくる。

「…さ、俺のマンションに帰ろう、キョーコ。車を回してもらってるんだ。」

粉砂糖まぶしハニーキャンディーが、溶けてベタベタにくっついたみたいな、ねちゃねちゃな甘ったるい蓮の声と、大きな掌に背中を優しく、でも有無を言わせない力強さで押されて、キョーコはミノムシみたいになったまま、どちらともよくわからない方向に退去のおじぎをして、その場をあとにした。

少し歩くと蓮のお許しが出たのか、顔の部分だけは開いてもらえた。視界が開けてキョーコが前を見ることができるようになると、蓮に手首をぐんぐんと引っ張られて、キョーコが入った門とは離れた所にある屋敷の正面まで連れていかれた。そのまま、ロータリーに回されてきた蓮の車に乗せられそうになる。

キョーコは、ぐっしょりと濡れた服で乗ることに抵抗があって、引っ張られていた手首を少し力を込めてぐい、と手前に引っ張った。蓮は無表情なまま、「ああ。」と呟いて、後部座席にあるブランケットを助手席のシートに敷く。

「乗って。」

(…ああ、敦賀さん。またさらにイライラしちゃった。)


キョーコは、「終わったんだ」、と思った。

蓮とのお付き合いは、終わったんだ、と。


あの日、二ヶ月前の、あの時。すぐに別れがくると思った蓮との付き合いが、意外なことに一ヶ月間も続いて。だからキョーコは、元ラブミー部の部室で、決めたのだった。蓮に、「女としての初めて」をもらってもらおう、と。

(私、本当に犯罪レベルで図々しいなあ。敦賀さんも、そんなもの押し付けられても嫌だよね…。ほんと、私って身の程知らず…。今日も晩御飯作れたらいいなあって思ってたし………あ、そっか、私本当に今から敦賀さんのマンションに連れていかれるんだ。きっと、優しいから寒いのも憐れに思って…それに、圧力鍋とか色々私物を持ち込んだから、回収しろってことなんだろうな。)

キョーコの思い描いた、蓮とのごくごく直近の、小さい未来地図は、ことごとくビリビリと破り捨てられていった。

(でも…最後の砦…。私のなけなしの想いだけは汲んでもらえないかな…。女優京子は、嫌いにならないでほしいよ………。)

「今日は、私の私物、全部持って帰りますね。」

キョーコは、蓮の気分が少しは軽くなればと思い、小さな声で言った。

結果的に。蓮から漂ってくるオーラは、さらにどす黒く重たいものになった。

(イライラを越えて、心底怒ってる…。こうなれば、もう、最後は敦賀さんの優しさに…『本気で謝った人をいつまでも怒ったりしない』という言葉にすがるしかない。)

車中のキョーコは、そんなことばかり考えていた。






車から降りた蓮は、助手席に回り込んでドアを開けてくれる。無言のままの蓮に、手首を掴まれた。ほとんど引きずられるようにキョーコは蓮のあとをついていく。

エレベーターに乗ったキョーコは、意を決して口を開いた。

「…ごめんなさい。」

「…何が?」

蓮は前を見据えたままだ。

(もしかして、呆れ返って、私に謝らせるつもりさえないの?でも、怯んでいる場合じゃない。)

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

「…だから、何がごめんなさい?」

「あ、あんな見苦しい格好で、仮にもLMEの所属なのに、だからっ敦賀さんの後輩だって、皆さんにバレちゃって!辰野さんにだって、敦賀さんと面識あるって思われて!」

エレベーターを降りて、ここならばもう誰にも聞かれないと思ったキョーコは、渾身の力を込めて謝った。蓮は振り向いてはくれなかったが、今を逃すと、今後蓮と二人きりになれることなど二度とない。

謝るなら今しかないのだ。

「なんでも言うこと聞きます!付き合っていたことだって、ちゃんと無かったことにします!万が一マスコミが来てもうまく立ち回ってみせますから!」

背中から怒りのオーラを発したままキョーコの手首を引っ張って前を歩く蓮に、『どうか私の気持ちが届いて!』と願いを込めて、キョーコは半ば叫ぶように謝罪の言葉を繰り返した。

「だから、だからどうかっっ私がLMEでお芝居を続けても…」

蓮がドアを開けてキョーコを家の中へ引きずりこむ。

「……無かったことに……!!?無かったことにだって!?なんで…なんで君は…今だって、こんなに俺を煽って!!」

キョーコの視線は、ようやく振り向いてくれた蓮の目と合った。

キョーコは、一瞬にして息がつまる。

蓮の瞳はほの暗く。底知れぬ闇をたたえて、さらにその奥に得体の知れない焔を燃やしていたから。


「…おもしろいのか?もしかして俺をバカにしてる?俺がこんな姿の君を見て、一人で欲/情して苦しんでいるのを見て嘲笑ってるんだろ!」

蓮は、キョーコの両方の二の腕を強く掴んだまま、至近距離で声を叩きつけてきた。蓮に怒鳴られたことなどほとんどなかったため、キョーコは蓮の大声に完全に萎縮した。

「え…、よ…?ちがぅ、ちがっ」

「…違う!?何が違うの?」

うまく言葉を紡げないキョーコに、畳み掛けるように蓮は言葉をぶつけてくる。

「俺と束の間の恋愛ゲームを楽しんだら、今度はあの男に乗り換えるつもりなんだろ!?この髪の毛…おとなしくあの男に触らせていたよね?役を憑けているわけでもないのに、俺以外の男に体の一部を許すんだね……。君と付き合っているのは俺なのに…!!!!」

「か、体の一部を許すって…そんな大げさなものでは…」

「…っはは。随分となめられたもんだな、俺も。じゃあ、このままベッドに行くとしようか。」

「ベ………っと?」

「そう、ベッド。君は今から俺に『初めて』を無理矢理奪われるんだ。大事にしてきたんだろ?本当に大切な男にもらってもらうために。…あの時ね、俺は…聞いていたんだよ?」

キョーコは、息をのんだ。

「内緒話をする時は、周りに注意しないとね。特に、一番聞かれたら困る相手……俺がドアの外にいないかくらいは確認しないと。クスッ。まあ、俺には好都合だったけれど。おかげで君を逃がさずにすんだ。」

「…ぁれは、その」

「いくら俺を掌の上で転がして高見の見物をきめこんでいたとしても、詰めが甘かったね。俺は君には無体なことはしないとでも鷹をくくっていた?おあいにくさまだよ。俺は紳士でもなければお人好しでもない。君が俺から離れると言うのなら、どんな方法を使ってでも俺に縛り付けるよ?…俺に滅茶苦茶に抱かれた体をひきずって、他の男のところにいけるような神経の持ち主じゃないからね、君は。それに、一晩中俺に犯され抜かれたあとに、この家から逃げ出すだけの体力が残っているとも思えないしね。」

蓮の言葉に固まってしまったキョーコを、蓮は一気に肩に担ぎあげた。


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皆様の二次小説、本っ当におもしろいですよね。言い回し一つとっても、私には思いつかないものばかり。いいなあ〰いいなあ〰いいなあ〰いいなあ〰(*T^T)

しつこいですが、これは言わずにはおれません(´・ω・`)

あ〰〰こんなんじゃあ、キョーコたんの必死さも、蓮さんの迫力も何も伝わらない。この設定は、ある意味王道に近いものがあると思うのですよ。でも、それをどう料理するかは、書く人の力量に委ねられていますものね……(´;д;`)

辰野氏のお庭での時間の流れがおかしいのは、完全にご都合主義だからです!えっへん( ̄^ ̄)←←←