「これあげる」
体を起こした俺の後ろから差し出されたペットボトル。
「渡邉 さん?」
「早く受け取って」
そう言われ、押し付けられるように俺はペットボトルを受け取った。
「ありがと...」
暗いし泣いてるのバレてないよな。
俺はこれ以上自分を情けない奴にしたくなくて
渡邉さんから見えないように、手の甲で涙を拭き続ける
だけどその手を渡邉さんが握って、俺の隣に座った。
咄嗟に誤魔化そうとしたけど、腕に力が入らず何も出来なかった。
「これは...」
代わりに言い訳でも言おうかと、言葉を発しようとした声は渡邉さんに遮られる。
「男だからとかそんな事どうでも良くない?泣いたって、カッコ悪くも情けなくもないよ」
「ッ...」
そんな渡邉さんの言葉が俺の胸にスっと入った。
その瞬間、涙が止まらず溢れた。
多分俺が1番、誰かに言って欲しかった言葉だったからだろう。
俺は涙が枯れるまで、隠さずに泣いた
多分、人生で1番 泣いたと思う。
そしてそんな泣き続ける俺の隣に、渡邉さんはずっといてくれた。
「はぁー」
ひたすら泣いて、俺は全ての涙を出し切ったのか涙が止まり息を思いっきり吐く。
「泣くとスッキリしない?」
「ダサいな俺...」
「まだそんなこと言ってるの?馬鹿みたい!」
渡邉さんはそう言って俺のおでこにデコピンをして笑う。
「イタッ!」
「志田くんのイメージ変わった」
「そりゃ、こんな泣いてる姿見たらな...」
自分に呆れて勝手に笑みがこぼれる。
でも俺からしても渡邉さんのイメージは変わった。
全然怖くないし、むしろすごく優しいことに気づいたから...
「今の方が好きかな」
彼女はそう呟いて、今度はデコピンした所にそっと唇をあてる。
「今度なんか奢ってね」
悪戯っぽく笑って、彼女は立ち上がった。
俺の全てはそこで思考停止。
お礼も言えず、ただ ぼーっと渡邉さんの後ろ姿を見ることしか出来なかった...
続