とりあえず、何か言われる前に謝っておこう。
「その、昨日の事なら謝るよ...ごめん」
俺の顔をジッと見つめる彼女はそんな俺の謝罪も無視した。
それなのに、何かを話すわけでもなくただ向かい合っている。
訳も分からず俺も彼女の顔を見た。
たしかにしっかり顔を見てみると
織田の言う通り可愛くて男子にモテそうな感じだ
でも俺は、昨日の怖いイメージが強すぎて...
「その!」
「ごめん!」
「え?」
彼女の顔のことを考えていたから
彼女が話し始めた瞬間、咄嗟に謝ってしまった
けど当たり前だが、俺の考えてることが彼女に分かるわけがない。
自分の行動がツボに入って笑えば、彼女は昨日と同じ冷酷な目をする。
変な人を見るような、そんな目だ。
冷や汗をかいてきた俺は、上がった口角を元に戻し咳払いをして誤魔化した。
「ゴホッ...えっとそれで、なんて言おうとしてたの?」
「その 昨日の事謝りたくて、足の事 私知らなかったから強く言っちゃってごめんなさい...!」
彼女は頭を下げて俺に謝った。
予想外のことだったから俺の瞼はパチクリと動く。
詳しく聞くと、どうやら昨日止めに入った生徒に離された後、俺の足の事を聞いたらしい。
だから俺の手を引いて歩いた時、あんなにゆっくりだったんだ...
流石の俺もあんなにゆっくりじゃなくても大丈夫だったんだけど
まあ、文句を言うことじゃないしな。
「いや 俺も手で取ればよかったのにさ ごめんな、ほんと気にすんなよ...」
そう言って俺は彼女の肩をポンッとひとつ叩いて教室へと戻った。
「このたらし野郎!」
教室に入ると同時に、織田がそう叫びながら俺の所に走ってきた。
「声でけえよ」
「そんなことよりなんの話しだったんだよ!まさか告白じゃないだろうな?」
織田は今にも俺の襟を掴みかかりそうな勢いで話す。
「違うよ ただの世間話」
そんな織田を俺は手で押しのけて自席に向かう
ピコン
(今日の夜 ご飯行きませんか?)
席に座ると、長濱さんからメッセージが届いた。
「うわっ、ほんとむかつく奴だな まなき!」
メッセージを読んでいると
後ろから織田が、俺の携帯をヒョイと持ち上げ内容を確認しながら妬みばかり言ってくる。
「織田、見苦しいぞ」
そう言って携帯を取り返すと、織田は唇を噛みながら自席へ戻って行った。
(おう、行こう!)
長濱さんへ返信をして、俺は携帯の電源を落とした。
続