靴が床に擦れて、音が鳴り続ける
だから俺の靴は いつも片方だけダメになるんだ。
コーラを注いで席に戻る俺を長濱さんはずっと見ている。
でも彼女のその目は、俺を可哀想には見ていなかった。
それが少しだけ嬉しく感じる。
「まなきくんは何が好きなの?」
席に座った俺に、長濱さんは足のことを触れずに違う事を話し始めた。
ここは気を使って なのかもしれない、と思うところかもしれない。
だけどそんな風には感じなかったんだ
顔を始めて合わせたさっきと何も変わらない彼女の表情と声は、俺を安心させてくた。
「んー、特にないかな」
「そうなんだ 私はね料理が好きなの、あとはミュージカルとか!他には...」
つまらない受け答えしかしない俺に、長濱さんは自分の事を沢山話してくれた。
気づけば1時間ほど経っていて、そろそろ解散しよう なんて話が出た。
支払いを俺と織田でして4人でファミレスを出る。
すると長濱さんが背伸びして、俺の耳元で呟く
「まなきくん、連絡先教えて...?」
「おう...」
俺は頷いて携帯を取り出すが
長濱さんが近づくと、俺のドキドキと言っている心臓の音がバレるんじゃないかって ヒヤヒヤした。
「ねるって名前で登録してよ?」
連絡先を交換すると、彼女は笑顔を見せて嬉しそうに手を振る。
「またね」
そう言って俺も手を振った。
何度も織田に呼ばれてこうして女子と会ってきたけど、連絡先を交換したのは初めてだった。
酷い時は"顔だけ良くても"なんて言われてたから
「はぁ...」
2人とわかれた後、隣に居る織田からため息が漏れた。
「どうした?」
「またダメだったよ、俺マジで由依ちゃん狙ってたのに...」
織田は本気でショックを受けているようだった。
確かにこいつは 無駄に明るくて
普通にうるさくて
空気は読めないし
私服は死ぬほどダサい
でも、めちゃくちゃ良い奴なんだ。
「お前の良さが分からない奴は、ほっとけばいいんだよ」
俺はそう言って歩き出す
「まなき、今のもう1回きかせろよー!」
すぐ俺に追いついた織田は、肩に腕を回してニコニコ笑ってる。
「重てえよ...」
こいつといる時は、俺にとって足を忘れることが出来る唯一の時間なんだ。
続