梨加さんから送られてきた文を読み、とても焦った。
そしてそれと同時に梨加さんに付きまとっている人への怒りが溢れる。
『大丈夫ですか?!何もされませんでしたか?』
『うん...すれ違っただけ。』
返ってきた返信を読み少しだけ安心した。
その日の寝る時、私はあることを決心する。
「梨加さんを守りたい...」
それからの私の行動は早かった。
まず店長に防犯カメラの映像を見せてもらい、梨加さんに付きまとっているお客さんの顔を確認した。
そのお客さんはよく見る人で、私も何度か対応をしたことがあった。
そして私は仕事をしながら、その人が来ないかを確認した。
カランカラン
「いらっしゃいませ。」
時刻は20時、ついに梨加さんに付きまとっているお客さんが来た。
どういうつもりで梨加さんに付きまとってんだよ。
その人の顔を見るととても腹立たしく感じた。
そして梨加さんのことを探しているのか、その人はキョロキョロと辺りを見渡している。
今は店員という立場だから特に何も出来ないけど
やっぱりムカつくから、その人を眉間に皺を寄せながら睨んでおいた。
そのお客さんも少し前に帰り、私たちも上がる時間。
「梨加さん、先に上がります!それじゃっお疲れ様でーす!」
「理佐ちゃんお疲れ様...」
足早にバイト先を出で、梨加さんの住んでいるアパートまでの道を自転車で進む。
辺りを見渡すとアパートの近くにあの人がいた。
「やっぱり居た。」
自転車を近くに止めて、アパートまで歩く。
その人に近づいたところで声をかけた。
「あの。」
自分に話しかけられていないと思っているのか、その人はそっぽを向く。
「貴方に言ってるんです。」
「な、何ですか...?」
目の前にたって睨みつけると、キョロキョロしながらも私の目を一度見た。
すごく挙動不審。
「梨加さんに付きまとってるのあんたでしょ?」
私は早速核心に迫った。
「知りません...」
「は?知らないって何、こっちは知ってんだけど。」
「...す、すみません」
「次やったら許さないから。」
「はい...」
その人は私が知っていることを聞くと
驚いた表情のまま謝り、小走りで走っていった。
「なにあれ。まっこれで大丈夫かな。」
何も起きず案外早く終わったことにほっと一息つき自転車のところまで戻ると、そこには梨加さんが立っていた。
「理佐ちゃん...今あの人の事追い払ってくれた...?」
梨加さんの言葉に少し考えてしまった。
追い払ったことは本当だけど、梨加さんには少し見られたくない気持ちがあったから。
恥ずかしいというか、なんというか...。
でも見られていたなら仕方ないか...
「う、うん。」
「理佐ちゃんありがとう...!!」
「...!?」
認めると、梨加さんは突然私に抱きついてきた。
心臓がドキドキして爆発しそう。
「梨加さん...?」
「理佐ちゃん本当にカッコイイ...!」
「梨加さん、照れます...」
「あっ、ごめん...」
手を離して私の事を上目遣いで見る梨加さんの頬が赤い。
何だかとてもいい雰囲気なきがする。
けど、期待はだめだ...
「梨加さんは可愛いです...だからあの人みたいなお客さんがまた現れるかも。
でも、安心してください...その時はまたわたしが守ります。」
本当に言いたいことは言えなかった。
けど、それも言いたかったことだ。
引かれたかな?って心配に思った。
だけどそんな心配はいらなくて、梨加さんはパァっと嬉しそうに笑ったあとこう言った。
「理佐ちゃんは私の王子様だね!大好き!」
私の想いは叶わないし、恋愛感情を持っている事を伝える勇気はない。
だから梨加さんの王子様にはなれないけど、そう言ってくれたことがとても嬉しかった。
「王子様じゃなくて騎士ですよ!梨加さんを守る騎士!」
「騎士も王子様と同じくらいかっこいいよ...!」
「どうですかね...」
そんなことを言われたら馬鹿な私はもっと梨加さんを好きになってしまう。
だけどきっと、いつかは梨加さんに本当の王子様が現れる。
その時まで私が梨加さんの近くにいられる可能性なんてほぼないし
もし居られたとしても、ただの騎士だったと思い知って泣くだけだ...
だけど世の中何が起こるかなんて分からない。
ほんの少しだけ、王子様になれますようにと願ってみよう。
終