心が弱いから、人のちょっとした言動に傷つく。


泣くつもりなんてないのに


目から勝手に、大きな涙が零れてくる。



「佑唯ちゃんどうしたの?」



しゃがみ込む私の前に誰かが屈んだ。


少しだけ顔を上げると、心配そうに眉間へしわを寄せるゆいぽんの顔が見えた。


彼女とは、私がこの街へ越してきた3年前からの付き合いだ。


ゆいぽん...ゆいぽん...」


彼女の名前を呼ぶと、溢れる涙に勢いが増す。


「佑唯ちゃん、おいで」


落ち着くその声を聞いて、ゆいぽんの胸の中に身を寄せた。


「うっ、うぅっ...うっううっ...」


私より何歳か歳上なだけで、こんなにも変わるんだ。


自分が今のゆいぽんと同じ年齢になっても、私じゃ今のゆいぽんの様にはなれないとつくづく思う。


「落ち着いた?」


私の頭を撫でながらそう言うゆいぽんの質問に

私は目を見る事も、声を出す事も出来なくて...

だから代わりにコクリと頷いた。



「ほら、こっち向いて?」


両手で頬を包まれながら、優しく促され


綺麗なゆいぽんの瞳と目が合った。


「そんなに泣いたら目が腫れちゃう。」


少しだけ呆れたようなその顔に心臓がドキドキする。


でもそんな私の気持ちを知らないゆいぽんは、私の頬に当てたままの親指を伸ばして

勢いこそ収まったものの、未だに零れ落ちてくる涙を吸い込むように親指で拭った。



「帰ったらちゃんと冷やすんだよ?」


「うん...」


頬からゆいぽんの手が離れると


切なく、そして寂しくなった。



「一人で帰れる?」


ううん...


ゆいぽんの問いかけに、私は嘘をついた。


弱っているのを良いことに、ゆいぽんと少しでも長い時間を共にしようとしたんだ。


「じゃあ、送るね。」


私のずるさを知らないゆいぽんは、素直に私を家まで送ってくれた。


「いつもごめんね...ありがとう。」


「気にしないで、またね!」



別れを言って玄関の前からゆいぽんの後ろ姿を見ていると、曲がり角の手前で一台のバイクが止まった。


「理佐先輩だ。」


私と同じ学校に通う一つ年上の渡邉理佐先輩はゆいぽんと恋仲にある。


ゆいぽんはいつも私を送ったあと、あの曲がり角で理佐先輩と落ち合い、バイクでどこかに消えていく。



ゆいぽんは知らないだろうけど


その光景を見た私は





また、涙を流しているんだよ...