私の名前は志田愛佳。
今はお母さんにお使いを頼まれて、駅前のコンビニに向かっているところ。
志田「はぁ...寒いな...。」
あまりの寒さに、お使いを承諾したことに後悔していると
私の目に、一人の綺麗な女性が映った。
「お願いします...!」
その女性は小さな声でそう言いながら、一生懸命ティッシュを配っていた。
きっと、ティッシュ配りのバイトだろう。
と言っても、さっきから誰も受け取ってくれていない...。
それに彼女の後ろには、まだダンボールが積み重なっていた。
綺麗な人なのに、何で誰も受け取らないんだろ。
うちならすぐ受け取るね。
そう思いながら、私は彼女の前を通った。
「...。」
だけど、彼女は私にティッシュを渡そうとしなかったから
私はそのまま彼女の前を通りすぎてしまった。
志田「いやいやいや...まじか。」
ティッシュを差し出されなかった事にショックを受け、そう呟いてから後ろを振り向くと彼女は俯いていた。
私は彼女の事を知らないのに
何故か、放ってはおけなかった。
だから私はまた彼女の所に行って、今度は彼女の前で止まった。
志田「大丈夫ですか?」
そう聞くと、彼女は顔を上げて小さく首を横に振った。
志田「ティッシュ配り、終わらないと帰れないとか?」
「コクン」
私の質問に、今度は頷いた。
もう時刻は20時を過ぎていて
このままだと彼女は家に帰れないし、これ以上暗くなっては危ないと思って
私は彼女を手伝うことに決めた。
だから私は、ダンボールを指さしながら
志田「それ、手伝おうか?」
そう聞くと、彼女の表情がパァーっと明るくなった。
「いいんですか...?」
志田「うん。あ、その前に名前を聞いてもいい?」
梨加「...渡辺梨加。」
志田「梨加ちゃんね、私は志田愛佳。よろしく!」
そう言って手を差し出すと、梨加ちゃんはギュッと私の手を握った。
その手はとても冷たくて、その事から長い時間頑張っていることが分かった。
志田「よし、じゃあ頑張ろっか?」
梨加「コクン」
梨加ちゃんにそう言ったあと
私は後ろのダンボールからティッシュを取って、通行人にティッシュを配り始めた。
続