ヒュー
小林「やっぱり寒い...。」
志田「そうかな?そんなに寒くないよ?」
愛佳を説得するはずが
逆に説得されてしまったというか、流されてしまったというか、
んー...、一番正解に近いのは釣られてしまった。
のような気がする...。
まあ、何にせよ
準備を終え愛佳と外に出た私は、冷たい風に耐えていた。
すると、少し前を歩いていた愛佳が振り返り
私との距離が結構あったことに気づくと、小走りで私の元にきてこう言った。
志田「由依ってこんなに歩くの遅かったっけ?」
小林「寒くてこのペースが限界...。」
早く歩くと、その分冷たい風が強く当たることから
これが一番良いペースと伝えると、愛佳はケラケラと笑い出した。
志田「マジかよ!まだ真冬でもないのに!」
確かに11月でこんなに寒がっていたら
もっと寒い日に、私はどうなってしまうのだろう。
そう思って、今年の1月はどうなっていたのか?と、記憶を辿ったけど全然思い出せなかった。
残念。
そう思いながら、ボソッと私はこう呟いた。
小林「真冬はお仕事以外家を出ないことにしようかな。」
すると愛佳は残念そうな表情でこう言ってきた。
志田「えー!なんでよ!寒い日にはクリスマスとか初詣とか色々あるのに...!」
小林「私はそういうの別にいいや。」
愛佳の言葉に素っ気なくそう返せば、愛佳はしょぼんとした顔で私を見つめてくる。
傷つけてしまっただろうか?
そう思っていたら、愛佳はおもむろに私の右手を掴んできた。
小林「愛佳?」
志田「由依は本当に冷たい...」
小林「え?」
愛佳は何に対して冷たいという言葉を送ったのだろう?
私の手が冷たいってこと?
それとも、私の心が冷たいってこと?
会話からしたら、私の心のことを言っていると思う。
でも行動からしたら、私の手のことを言っているようにも捉えられる。
なんて悩んでいたら、愛佳は笑いながら私にこういってきた。
志田「何で変な顔してんの?」
小林「?」
何のこと?そう思いながら首を傾げると
愛佳は更にケラケラと笑い、私にこう伝えた。
志田「由依、凄いひどい顔してたよ?」
小林「は?愛佳怒られたいの?」
愛佳の発言に少しイラッとした私は
すぐ愛佳にそう言葉を返し、鋭い視線を向けた。
すると愛佳は、私を両人差し指でさし
今度はヘラヘラと笑いながら私にこう言ってきた。
志田「こわい、こわい...!鬼由依登場だ!!」
その言葉に怒った私は
小林「バカ愛佳!絶対許さない...!」
そう言って、愛佳のことを追いかけた。
走っている場所は寮の目の前の道路で、そこを行ったり来たり二人で走っていた。
志田「うわっ、やっぱ足速っ...!
てか、ゆっくり歩かないとその分強い風が当たって寒い、とか言ってたくせに本気で走ってんじゃん...!」
なんて、愛佳は走ってる最中にそう言ってきたけど
あれとこれとは別なのよ。
そう思って、私は本気で愛佳を追いかけた。
行ったり来たり、何往復しただろう。
きっと十往復くらい...
そのころに、私と愛佳は力尽きて走るのをやめた。
小林「もう、ほんと最悪...疲れたし暑い...」
道路に屈んで、そう不満をたらすと
愛佳はキラキラとした目で私にこういった。
志田「おっ!由依今なんて言った?」
小林「え?ほんと最悪?」
志田「違う!そのあと!」
小林「疲れたし暑い?あっ...!」
志田「そう!暑い!動いて温まったでしょ?」
愛佳に言われて気づいたが、確かに今は 外に出たばかりの時とは違い
私の体は寒さではなく暑さを感じていた。
小林「まあ、寒くはないよ...」
愛佳にそう言うと、愛佳はドヤ顔を私に見せて
志田「流石うち!感謝してよね!由依!」
なんて言ってきたけど、疲れたし 汗はかいたし 結局、寮の前で走っただけでどこにも行ってないし、時間も少ししか過ぎてない。
そう思うと、やっぱりあそこで愛佳を追い出し寝るのが正解だったかもとも思えた。
でも愛佳はきっと私を思ってしてくれたんだから、ちゃんとお礼は言わないとね。
そんな結論に私はたどり着き、愛佳にお礼を言った。
小林「愛佳のおかげで寒さに勝てたよ、ありがとう。」
すると愛佳は調子に乗ったのか
志田「あはは、うちは凄いからね!」
なんて腕を組みながらそう言ってきたから、私は呆れてそそくさと逃げるように自分の部屋へ向かった。
その途中、後ろから愛佳の
志田「ちょっと、由依!また怠ける気だな!今度こそちゃんと出かけるからまだ戻らないで!!」
そんな大きな声が聞こえたけど
時間が経って、また冷たくなり始めた私の体は温かい布団を求めていたから
私は立ち止まらず自分の部屋に入り、一目散に布団へと潜った。
そして
小林「やっぱり家が一番!」
そう呟いて、眠りについた。
終