今日は、夏休み最終日。


毎年、期限通りに提出できていなかった課題も
今年は夏休み中に終える事が出来た。


いつもの夏なら 終わってなくても、なんとかなるって考えてそのまま諦めていたけど

今年 必死に取り組んだ理由は、ねるとお出かけするため...。

ねるは努力家だし、効率がいいから
計画を立てて課題を二週間前に終えたらしい。


それで、一昨日の事。

長:夏休みの最終日に、私と遊びたい人は課題終わらせてね〜!


なんて、私の部屋に勝手に入ってきて突然そう言っていた訳。

もちろん素直に遊びたいって思ったから、私は死ぬ気で課題に取り組みましたよ...。




そして今日の十時頃に、ねるが迎えに来るという事で、支度をしてねるを待っていると


「友梨奈ー!ねるちゃん来たわよー!」


平:はーい!


一階にいるお母さんに呼ばれ、私は鞄を握って下に降りた。



平:ねるおはよう!


長:フワァ...てちおはよう。


玄関には、ねるが眠そうに欠伸をして立っていた。


平:あれ、ねる眠いの?


長:うん、楽しみでよく眠れなかったー...



眠いか確認したくてそう聞いたけど、
まさか、そんなに嬉しい言葉を聞けるとは思わなかった。


そして 朝からテンションの上がった私は、
口に手を当てながら、何度も欠伸をするねるを連れて、
今日の目的地に向かうため、駅へ足を進めた。


この夏休み、ねるとは何度か会って遊んだけど
電車に乗るほど遠いところには行って無かった。


だから旅行みたいで、なんだか嬉しかったんだ。


最寄り駅から目的地までは、電車一本で行けるけど乗車時間は一時間半ほど。


ねるはというと、相当眠かったのだろう
私の肩にもたれかかってスヤスヤと寝ていた。


ねるの寝顔を見るのは、とても久しぶりな気がする。

どこかに泊まりに行っても
私の方が早く寝てしまうし、起きるのは後に寝たはずの ねるの方が早い。

だから寝顔はとてもレアなんだ...。


なんて思いながら、ねるの寝顔を見てドキドキしてる自分に呆れながらも目的地まで私も寝ることにした。











...

長:てーち!起きて!ほら着いたよー!


平:んー...ハッ


ねるの声で目を覚ました私は、急いで二人で電車を降りた。


平:フゥ...危なかった...。


危うく乗り過ごしそうだった為 ちゃんと降りれて安心していると

隣に居たねるが、なかなか強めのチョップを私に放ってきた。


長:えぃ!


平:...イタッ!?


長:頭にハテナ浮かべてボケッとしてないで、早く行くよー!!


平:あっ!待ってよ!!


ニコニコ笑いながら、先に行ってしまった ねるの後を追って、私も駅構内を出た。


駅を出ると、すぐ近くにねるが立っていてバックには綺麗な青い海が広がっていた。

そう、私達が今日向かう予定だったのは夏らしく海だったんだ。


長:すご〜い!夏だ〜!!!


平:だね!


私は海風に当たりながら、綺麗な海を眺め
これからもっと近くにいけると思うとワクワクが止まらなかった。


長:本当に綺麗...


平:私も丁度思ってた所!早く近くに行こ?


長:あっ、うん...!


平:?


何だか、さっきまで元気だったねるが
しょんぼりして見えたけど、気のせいかな...?


ねるを気にしながらも、私達は海への道を隣に並んで歩いた。


お昼に近かったからと、海に向かう途中にご飯を済ませ
少し話してから、私達は再び海へと向かった。





長:わ〜気持ちよさそう!!



砂浜に着くと、ねるはそう言ってすぐに海へと走って行った。


平:いい天気だし、良かったね!


長:うん!



こうして私達は一緒に、海での時間を過ごした。











楽しい時間はすぐに過ぎるもので、はやくも夕方。

日も落ちてきて、綺麗な海に美しい夕陽が照らされていた。

こんなに綺麗な光景を見る事が出来るなんて...。


平:ねる、凄いね...。


あまりに美しい、この情景に目を奪われ見入っていたが

ねるに話しかけても反応が返ってかったため、
どうしたのだろうかと、私は視線をねるへと向けた。


平:ねる...?


長:あっ、ごめん。ボーッとしてた!



そう言って、アハハと笑う ねる。


さっきまでは夕陽に見入ってたけど、
今、私の瞳には ねるだけしか映っていなかった。


とてもいい雰囲気。

私は、ここで気持ちを伝えたいと 強く思った...。



でも そう思った瞬間から、急に緊張してきてドキドキが止まらなかった。


長:あれ、てちどうしたの...?


どうにか落ち着こうと、胸に手を当て深呼吸していると
ねるは心配そうにそう言った。


平:何でもないよ?


なんて、笑顔で気持ちを誤魔化してそっぽを向くと
ねるは優しく、私の手の甲に手のひらを重ねてきた。


そして、いつものねるのこんな声が私の耳にスッと入ってきた。



長:隠さなくていいよ...私も もう隠さないから。


平:ねる...。



私が、ねるの気持ちに少し勘づいていたように

私の気持ちもねるにはバレていたのかな...。



そう思わせるような ねるの言葉で、私は ねるへの気持ちの整理がついた。

でも、知らぬ間に隠してたその気持ちを伝えるのは勇気がいるもの...。


だから、私は立ち上がって海へと走った。


長:えっ、てち...!?



バシャバシャ


海水が膝あたりに来るところまで走って、そこで体の向きをねるへと向けた私はこう叫んだ。



平:私、平手友梨奈は長濱ねるの事が...大好き!!


まるでドラマのシーンのように、恥ずかしいとか忘れて 思いっきりそう叫ぶと
ねるは私の元に駆けてきて、そのまま私に飛びついてきた。


長:えーい!!


平:わっ!



...バッシャーン!!!!



もちろん私は勢いに勝てず
そのまま ねると一緒に、海へ倒れた。



平: ねる...びっくりしたよ...!


顔を海水からあげた私はそう言って、ねるを見たけど
ねるは目を赤くして、泣いているように見えた。


平:ねる 泣いてる...?


長:泣いてない!海水だもん...!



私の気のせいだったのか、それとも誤魔化しただけだったのか
それは ねるだけにしか分からないけど

いつか笑って話してくれると 私は思ったんだ。


平:じゃあ、帰ろっか!はい!


座り込むねるにそう言って手を差し出すと、ねるは ハニカミながら私の手を握って立ち上がった。




こうして海から出た私達は、手を繋いで駅へと向かっていた。


長:ねぇ、てち〜?


平:ん?


少し薄暗くなった道を歩いていると、ねるが話しかけてきた。



長:いつもありがとう。ねるも大好きだよ...!


平:...ッ



いつもありがとう。


その言葉は、本当に嬉しい...。


そして、大好きって言ってくれたから
私も言い返そうと思ったけど、隣でねるが


長:照れてるでしょ?ねぇ、照れてる?


何て からかってきたから、言わないことにして


その代わり 普通に握っていた手を、恋人繋ぎに変えてやった。