平:うわぁ...!!


後ろには二つの影。

私は驚き、ビクッと肩を跳ね上がらせて声を上げると


長:...アハハ


後ろからねるの笑い声が聞こえた。


平:ねる...?


名前を呼びながらねるの方に体を向けると、ねるはお腹を抑えて笑っていた。


私の驚いている姿が面白いのか、

怯える私をからかっているのか、

それとも他に理由があるのか、


よく分からないけど、そんなねるを不思議そうに見つめていると
ねるが笑いをこらえながらこう言った。


長:てち驚きすぎ!ほら、もう一度よく見て?


平:えっ?


ねるに言われるがまま、もう一度 ゆっくり警戒しながら後ろを向き確認すると

二つの影の正体は、

ねるが当てた懐中電灯の光で 眩しそうに顔を歪める
同じクラスの、志田愛佳さんと渡辺梨加さんであることがわかった。


平:へっ...?何で二人が...ん?ねるは知ってたの?!


長:えへへっ、ごめんごめん!


平:全然、心ここもってないし!もう教えてくれたって良かったじゃん!


長:それじゃあ、てち怖がらないじゃん!それに、てちの驚いた可愛い顔も見れたし!


平:...ッ もう、ねるのばか...。



どうやら二人を誘ったねるは、
私を驚かす為 二人が来る事を内緒にしていたらしい。


という訳で、私を含む四人でスタートすることになった。


少し足を進めると、入口付近に居た時より涼しく感じた。

トンネルの真ん中辺りで足を止め、ねるはトンネルの中の写真を撮り始めた。


平:ねるは怖くないの...?


長:んー怖いよー?



怖いと言うわりには 全く表情変わらないし、すごく楽しそう...。

私からしたら、もう ねるの方が怖いよ...。



志:てちって本当にビビりだよね!


平:そんな事ないし!


志:わっ!


平:...ビクッ


志:ほらまた驚いた!


平:いきなり大きな声出したら誰だって驚くし!
大体 愛佳は、梨加ちゃんの事をちゃんと守ってれば?


志:チッ 言われなくてもそのつもりだし!



途中、ねると愛佳にいじられながらも

何とか私達は、トンネルを抜けた。




長:なんだー有名な心霊スポットだし、何かしら出ると思ってたのにつまんない!


ねるはトンネルを抜けてすぐに不満を口にしていた。


何も出なくてつまらないのは ねるだけで、ねる以外の皆は きっと安心していると思う。


そして帰りは トンネルを通らないように、遠回りで帰ることになった。


長:この分かれ道で、愛佳と私はこっち。梨加ちゃんとてちはあっちだね!


平:一人じゃなくてよかった...。


梨:私も...。


長:じゃあ、またね〜!


終始 元気だったねるに手を振り返して、
梨加ちゃんと帰ろうとすると、グイッと肩を引っ張られた。


平:...!?


トンネルじゃないのに幽霊!?

まさか連れてきちゃった?!


頭の中でグルグルそんな事を考えていると
耳元でこう呟かれた。

志:ぺーちゃんの事、よろしくね。


平:愛佳...?


志:じゃあ、ぺーまたね!気をつけて!


梨:うん!もなも気をつけてね?


梨加ちゃんは愛佳に愛されてるな...。

なんて思いながら私は梨加ちゃんに声をかけた。



平:じゃあ、帰ろっか?


梨:うん...!


ねる 愛佳とわかれ、梨加ちゃんと二人になった。

梨加ちゃんと私の家は近くて、ここから歩いて五分ほど。


何を話そうかな?

なんて 考えていると、梨加ちゃんから話しかけてくれた。


梨:てちはやっぱり怖かった?


平:うん、まあー 怖くないって言ったら嘘になるかな?
梨加ちゃんは怖くなかったの?


梨:うん...もなが手を繋いでくれたから...。



暗くても分かるぐらい、梨加ちゃんは照れながら
でも、とても嬉しそうにそう言っていた。


二人は付き合ってないみたいだけど、愛佳 頑張ってるんだな...。


こんなふうに、愛佳に感心していたら
いつの間にか梨加ちゃんのお家の前について居た。


梨:今日は とっても楽しかった...。また何か誘ってね?


平:もちろん!それじゃあ


梨:ねるちゃんと上手くいくといいね...!


平:!?


手を振って歩き始めようとした所で、梨加ちゃんに突然そう言われた。


「上手くいくといいねって」

「気持ち伝えて、付き合えたらいいね」


って事だよね...。

梨加ちゃんには私の気持ちがバレてるの...?



平:梨加ちゃん...?


梨:あっ、それじゃあまたね...!



タ ッ タ ッ タ ッ



詳しく聞こうと思ったら、梨加ちゃんは駆け足でお家の中に入ってしまった。



平:気持ちを伝えるなんて私には無理だよ...。







あと少しで夏休みは もう終わり...



その間に、私は気持ちを伝えられるのかな...。