ねるのおかげで綺麗になった部屋。

部屋が整理されているだけで、何故か気持ちいい。


そう感じながら漫画を手に取ると、


ピコンッ


枕元に置いていた携帯が鳴った。


しかし、さっきはねるに邪魔をされ 漫画を読めなかったからと
携帯は後回しにしようと思った。


ピコンッ ピコンッ ピコンッ


けど、何故か鳴り止まない携帯の音。

これじゃあ漫画に集中出来ないと、携帯を手に取ると ねるから連絡がきていた。


「てちー」

「ねえ」

「どうせゴロゴロしてるんでしょ?」


平:どうせって...まあそうなんだけどさ...。


「どうしたの?」


ブツブツそう呟きながら ねるに返信すると
 すぐに返ってきた。


「今日の夜 手持ち花火しよ?あっ、花火の準備は てちよろしく!
じゃあ私そろそろバイト戻らなきゃだから、また夜にね!」


平:えっ、花火私が買ってくるの...?


バイト してないのに...。

そう思ったけど、
ねるが 花火を楽しんでいる姿を 見てみたかったから

私は 貯めていたお小遣いをポケットにしまい、
涼しい部屋を飛び出して 近くのスーパーに向かった。


平:暑い...。


外は想像よりも暑く、
いつもよりも 体力を奪われているように感じた。


暑さと戦いながらも、スーパーで手持ち花火と自分用にアイスを買った。

そして、そのアイスを食べながら家へと帰った。


ガチャンッ


平:ただいまー


クタクタになりながらも帰宅した私に、お母さんが話しかけてきた。


「友梨奈おかえり。
あら?手持ち花火じゃない!ねるちゃんとやるのかしら?」


平:...。


ニヤニヤしながら 
からかう様に そう言ったお母さんは、私の鋭い目に気づくと

「ご飯作らなきゃ! ご飯ご飯...」

そう言いながらキッチンに戻って行った。


涼しい部屋に戻った私は、ねるが来るまで寝る事にした。

暑さで疲れたのか、寝転がってからすぐに眠りについた。







...数時間後


長:てち、てち!てーち!


平:んー...


長:てちってばー!


平:ハッ...


ねるの声で 私は目を覚ました。


長:起きた〜!ほら花火しに行こ?


ねるはそう言って、まだ寝ぼけている私の手を引き
もう片方の手では、手持ち花火を持って 外へと出た。


向かった先は 近くの河川敷。


長:楽しみだね〜!


ねるは手持ち花火を持って、楽しそうにそう言った。


平:ねる火つけられるの〜?


笑いながらそう言ったら、頬を膨らませた後 ねるはこう言った。


長:そのくらい出来るから!てちこそビビって出来ないんでしょ?


平:そ、そんなことないし...!


長:てちって本当に分かりやすいね!


平:うるさい!ほら早くやろ?


誤魔化したって、ねるにはすぐバレるなー...。


流石幼馴染み。


そう思いながら、ねるがつけたロウソクの火を手持ち花火につけて
二人で手持ち花火を楽しんだ。





長:後は線香花火だけだね...。


ねるは切なそうな声でそう言った。


平:線香花火と言ったら、どっちが長く続けられるか勝負だね!!


長:てちには負けないぞー!!


ねるの気が 沈んでしまったように感じたから、

私は盛り上げようと 線香花火をねるに渡して、勝負を持ちかけた。

すると ねるは食いついてきて、

周りは花火を始めた時より暗く、
表情は見えなかったけど、きっと笑顔だったと思う。


結局、線香花火の勝負は
4回やって 2勝2敗の引き分けで終わった。


花火も終わり、私たちを照らす光は何もなくなった。

そして、その場に並んで座ると ねるが話しかけてきた。


長:手持ち花火に付き合ってくれてありがとう!


平:こちらこそ!夏っぽいことできて良かった...!


長:そうだね!


平:また一緒に夏っぽいことしよう?


きっと私の表情なんて分からないだろうけど

何だか照れくさくて、私はねるの方を向いていうことが出来なかった。


でも ねるは

長:もちろん!約束!!


元気に私の方を向いて そう言ってくれて

私の小指に 自分の小指を絡ませた。


すると 川の流れる音に紛れて 


ドキン ドキン


そんな自分の心臓の音が聞こえた。