今泉さんの家の中は、音楽関係の物がほとんどだった。


今:好きな所にくつろいでて下さい!


理:ありがとう。


とりあえず、近くにあったソファに腰を下ろすと
目線の先にいくつかの写真立てがあった。

立ち上がり、写真立ての元に行き 手に取ると
それは 幼稚園生の頃の今泉さんと、
お母さんらしき人が写っている 写真だった。



今:理佐さん!


理:...!?


別に悪いことをしていた訳でもないが、反射的に名前を呼ばれてとても驚いた。


今:理佐さん何も食べてないですよね?カレー食べますか?


理:いいの?


今:もちろんです!


理:じゃあお願いしようかな。


返事をすると、今泉さんは満面の笑みでキッチンに向かった。


ソファにもう一度座った私は、カレーができるまで携帯をいじって待った。



今:お待たせしました!唯一 作れるカレーです!!


理:ありがとう。


唯一って、それあまり言わない方がいいんじゃ。
なんて思いながらも、有難く カレーを口に運んだ。


カチッ


理:ご馳走様、美味しかったよ。


スプーンをお皿において今泉さんにお礼を言うと、満足そうに笑っていた。


理:今泉さんは食べないの?


今:んー...じゃあ食べます!


理:うん。


何故 私と同じ時に食べなかったのだろう。

そんなことを考えながら、今泉さんがカレーを頬張っている所を眺めていた。

女の子が食べているところって可愛いな...。


理:...ハッ 


今泉さん相手に何を考えてるだ。

我に返った私は 首を横に振って、視線を今泉さんから逸らした。


カチッ


今:美味しかった〜!よし洗い物しよっと!


理:じゃあそろそろ帰るね?ご馳走。


ガチャ


カレーを食べ終わり 洗い物を始めた今泉さん。

帰るなら今しかないと、今泉さんに一声かけて扉を開けた。


しかし、声をかけたことが間違えだったようで
またも 今泉さんに引き止められてしまった。


今:この時間に帰るのは危ないですよ!


今泉さんは洗い物をしていたわけで、
今泉さんの手によって 私の腕も濡れてしまった。


理:ちょっと、濡れたんだけど...


機嫌悪くそう言っても、今泉さんは手を離してくれなかった。


今:お願いします...帰らないで下さい...。


その声は 何故か震えていて

帰ると言えなくなった私は、
もう一度 今泉さんの家に足を踏み入れた。