夏休みに入り、部活もバイトもしていない私は、家でだらしなく過ごしていた。


「友梨奈ー?ねるちゃんきたよー。」


冷房をつけ涼んでいると、一階からお母さんの声が聞こえた。


しばらくすると部屋のドアが開き、幼馴染みのねるが入ってきた。


ガチャッ


長:てちきたよー!って汚...。


人の部屋に入るなり汚いなんて酷い...。

そう思ったけど、ベットから体を起こして見ると
ねるの言った通りで、
掃除もしていない私の部屋は とんでもないことになっていた。


まあ だからと言って、掃除をする気も起きずベットにもう一度寝そべると


長:ちゃんと掃除しないとダメだよ?


床に正座をしたねるは そう言って、散らかった教科書を整理し始めた。

あまり勝手に触られたくはないけど、ねるが掃除してくれること自体はラッキー!

そう思って漫画を読み始めた。



平:あはははは


ガシッ


長:コラ!


平:...ビクッ。


漫画を読み始めて まだ数分。

それなのに突然 不機嫌そうなねるに漫画を取り上げられた。


長:何で てちはのんびりしてるの!?


そう言った ねるの声のトーンから
思ったよりも ねるが怒っている事に気づき、

ねるが怒ると怖いことは、身をもって知っていたから
私はベットから急いで降りて 正座をした。


平:ごめんなさい...。


謝ると、ねるはニコニコ笑ってこう言った。


長:じゃあ 掃除しよっか?


一瞬、機嫌が直って笑ったのかと思ったけど
どうやら勘違いだったようで、今では怖さしか感じない。


そんな事があって、
結局 掃除をすることになった私は、ねるに手伝って貰いながら掃除を済ませた。


平:終わったー!疲れたー...。


部屋の隅には ゴミ袋二つ分のゴミ。

そのゴミ袋を見て、相当汚かったのだと改めて思った。


長:てちお疲れ様!それじゃあ私はバイト行ってくるね!


私は疲れて、またベットに寝転がっていたが
ねるは元気よくそう言って部屋を出ていった。


バイト前に 私の部屋の掃除をしてくれたと思うと、とても嬉しかった。


そう言えば、ねるって何のために家に来たんだろう?

掃除のため?

でも、汚いなんて分からないはず...。


ねるが家に来た理由に頭を悩ませたが、聞いたほうが早いと思い
玄関に向かおうと部屋を出ると

一階から、お母さんと ねるの話し声が聞こえた。


「ねるちゃんもう用はいいの?」


長:はい!てちに会いたかっただけなので!


「それは友梨奈も喜ぶわね!」


長:どうですかね?あっ、この事てちには内緒で!
それじゃあ お邪魔しましたー!


ガチャン


平:会いたかっただけって...。


ねるの言葉に ほころんでいると


「友梨奈は幸せ者ね〜」


なんて、私が聞いていたことに気づいていたのか
階段の下から、上を覗き込み そう言ったお母さんと目が合った。


平:うるさい!


恥ずかしいし、何だか誤魔化したくてお母さんにそう言った後 部屋に戻った。


ベットに寝転ぶと、ねるの言葉が頭をよぎった。

そしてテンションが上がり、
それと並行して 体温が上がった私は、冷房の温度を更に下げた。


そして天井を見上げた私は、こう呟いた。


平:会いたいって 直接伝えてくれたら、私は ねるにすぐにでも会いに行くのに...。