照りつける太陽の光に耐えながら、私は学校へと向かった。


その途中に会ったのは、同じクラスの渡邉理佐と、見たことのない黒艶髪のとても可愛い一人の女の子。

目を奪われた私は、その子から視線を離すことが出来なかった。

そしてその子は私と目が合うと、頬を赤く染めて照れ笑いをした。

それと同時に私の心臓の鼓動はどんどん早くなり、その音は体中に響いた。



平:可愛い...。


ポロリと零れたその言葉。


理:...チッ。


それに対して、理佐は小さく舌打ちをした。


平:...?


?:理佐ダメだよ。初めまして、長濱ねるです!


平:初めまして平手友梨奈です!ねるよろしくね!


自己紹介をしてねるに手を伸ばしたはずなのに、その手は何故か、理佐が不機嫌そうな顔をして握っていた。

さっきから理佐が怖い...。


そう思っていると、理佐が今度はねるの手をギュッと握って一言こういった。


理:私の恋人だから。


それを聞いたねるは、嬉しそうに目をキラキラと輝かせて、
満足そうに理佐を見つめていた。

一方私は、急に頭がボーッとしてきて気がとても沈んだ。


平:り、理佐にこんなに素敵な恋人が...おめでとう。


理:ん。


長:じゃあまたね!


ねるは理佐と繋いだ手を揺らしながら、もう片方の手でヒラヒラと私に手を振って歩いて行った。



平:はぁ...。


ねるに私は心を奪われた。

それなのに理佐と付き合っているなんて、悲しいし 何だか悔しい。


唇をギュッと噛んだ後、私はまた一人で学校へと足を進めた。










ー数日後ー

 あの日以来、私はねるには会えていない。


話したいな...。


なんて思いながら廊下を歩いていると



理佐はねるが好きじゃないの?


そんな事言ってないじゃん。



言ってるみたいなものだよ!



なんてどこから怒鳴り声が聞こえた。

声の主はねると理佐のようだけど、
何であんなに幸せそうだった二人が、学校で言い合っているのだろう。


そう気になったが、私が行ったところでどうすることも出来ないし
きっと、余計なお世話だ。


だから私は、声が聞こえる方とは反対側に歩き始めた。




だけど少し進んだ所で


ガッタンッ!カランカラン...



詳しく何かはわからないけど、大きな音が聞こえて 私は咄嗟に音が聞こえた方へ走った。



タッタッタッタッ


着いた場所は空き教室。

ゴクリと固唾をのんだあと、私は扉に手をかけた。


ガラガラ


平:何があったの...!?


ドアを開けると、そこには倒れた机。

そして、泣き崩れている ねる。

ねるの前には、怒りを爆発させて逆に冷静になったのか、震える手を抑える理佐が居た。


ねるの元に駆け寄った私は、ねるを優しく自分の体で包むように抱きしめた。


すると、「怖い...。」ねるは小さな声で何度もそう呟いていた。


どうしていいのかも分からずに居ると、理佐が冷めた目 低いトーンの声で ボソッとこう言った。


理:もういい...別れる。


長:...ッ...うっ...。


平:えっ!理佐待ってよ!!



理佐は私の声で足を止めること無く、そのまま教室を出ていってしまった。


そして私は、しゃくり上げて泣き 怯えている ねるを慰めるようにもう一度、今度は強く抱き締めた。