私志田愛佳は、中学校に入ってからずっと一人の女の子に片想いをしていた。
その子の名前は渡邉理佐。
理佐は格好良くて 可愛くて それに性格も良い。
だから理佐はいつも多くの人に囲まれていて、しかも隣はいつも、クラスメイトの小林由依さんがキープしていた。
小林由依さんと渡邉理佐さんは、幼なじみでとても仲良し。
二人は恋人同士。
なんて噂されているけど、私はそうは思っていない。
いや、思いたくないから 違う って自分に言い聞かせているのかもしれない。
私は理佐と仲のいい友達として、一緒にたくさんの時を過ごした。
でも想いを告げる日が来ることは無かった。
こうして何も無いまま月日は過ぎ、中学校の卒業式を迎えた。
「もう終わりなんだね」「寂しくなるね」
たまに聞こえるそんな声で、卒業という事を実感した。
卒業式を終え、近くの公園に集まる卒業生。
この公園で、写真を撮ったり 別れを惜しんだりしていた。
公園の真中は、人が溢れている。
けどそれもそのはず、だってそこには大人気の理佐が居るから。
私は理佐と同じ高校へ進学しない。
理佐はとても頭がいいから、ここらじゃ有名な進学校に行くんだ。
だから私も、理佐と会えるのはきっと今日が最後なんだ。
人をかき分け、理佐の元へグングン進んだ。
理佐の顔が見えるほどに近づけた頃には、まだ寒い三月にも関わらず額に汗が滲んだ。
一人の女の子と写真を撮り終えた理佐は、私に気づいてくれて
理:ちょっとごめんね?
周りの女の子にそう言いながら、私の元まで歩いてきてくれた。
周りにいる沢山の女の子の視線が集まって、今までたくさん話してきたはずの理佐と、会話をするのにとても緊張した。
その緊張に気づいてくれたのか、
理:愛佳どうしたの?ほら、大丈夫だよ!
私の手を優しく握ってくれて、声をかけながら微笑んでくれた。
でもその笑顔も今日で最後と考えると、とても悲しかった。
だから私は周りの女の子たちに向かってこう叫んだ。
志:理佐をかります!
私の口から出たその言葉に、周りの女の子はザワザワし 理佐はぽかんとしていた。
けど私は、そんなのお構い無しに理佐の手を引いて人気のない道まで走った。
志:はぁはぁ
理:キツイー...
走ると体の寒さは飛び、急に春が来たようにポカポカとあたたかくなった。
息が整うと、私と理佐はガードレールに並んで座った。
そして話した内容は、思い出話だった。
理:楽しかったな〜!
夏にテンション上がった愛佳が、クーラーのスイッチの所に頭をぶつけて壊したり、
大掃除の時なんて、水の入ったバケツを思いっきり倒して教室をビッチョビチョにしてたよね!
でもそんなドジ愛佳と一緒に大切な時を過ごせた事、嬉しかった。
志:覚えてる...昨日のように覚えてるよ。
理佐との出会いは、うちの人生の中で必要なことだったと思う...。
うちと仲良くしてくれて本当にありがとう...。
大粒の涙が 頬を濡らした。
最後くらい笑っていたかったのに、ちゃんと理佐の顔を見たかったのに...。
でも泣く私の頭を理佐は優しく撫でて、取り出したハンカチを私に渡してくれた。
ハンカチで涙を拭くと、好きな人の笑顔がそこにあった。
「理佐!」
すると、突然聞こえた大きな声が理佐を呼んだ。
呼んでいたのは小林由依さんで、それに気づくと理佐は立ち上がった。
理:もう行くね。
そう一言いって、理佐は小林由依さんの元に駆け寄って行った。
もっと話していたかったのに、想いを伝えたかったのに...。
私の恋は終わりなのかな...。
理佐と小林由依さんの後ろ姿を見ながら、そう思った時、
手に持っていたハンカチに気づいた。
そしてそのハンカチは、理佐に会う理由になると思った。
そう、まだ私の恋は終わらない。
終