理:なんだか惹かれる...。
その言葉を聞いたねるは、驚いているというより 私を警戒するように 少し睨んでいるように感じた。
理:ごめん。
微妙な空気にさせてしまった事を謝り、体育館を出た方がいいと思った私は立ち上がった。
理:ねる、またね。
「また」そんな時が来るのか分からない。
それでも「じゃあね」にしなかったのは、ねるにまた会いたいという気持ちが強かったからだと思う。
ねるの表情も見ずに、私は体育館を出て下駄箱へ向かい始めた。
その途中、廊下の端に座り込む一人の女の子を見かけた。
理:愛佳?
志:理佐...?
私に気づくと愛佳は慌ただしく立ち上がって、そのまますがりつくように私の背中に腕を回した。
理:どうしたの?
志:理佐は長濱さんの事が好きなの...?
愛佳の問に、私はすぐ答えることが出来なかった。
それは好きじゃないからなのか。
それとも、愛佳を傷つけないようにだったのか。
自分でも詳しくわからなかったが、そのまま答える事は無かった。
だからその代わりに、愛佳をギュッと抱きしめてからこう言った。
理:帰ろっか?
愛佳はどこか不満そうだったが、コクンと頷いたのを確認して、私達は学校を出た。
あの日から私は、体育館を頻繁に訪れるようになっていた。
もちろん、ねるに会うため。
そして「また」その機会は自分で作ればいいと気づいたから。
入口からステージの方を見ると、両手を広げたねるがステージに立っていた。
ねるに出会って約一週間が過ぎた今日、私は初めてステージへ上がった。
でもそんな私にねるは気づかない。
「変わり者」そう言われるのが、ねるは嬉しいと言った。
周りと同じ事をやらない。
何を言われても、孤独になっても、ねるは自分の意志を変えない。
早々できない事を出来るねるは、やっぱり不思議だ。
そう思いながら、私は両手を広げるねるの目の前に立った。
理:ねえ、ねる?ねるは寂しくないの...?
私の質問にねるが答えることは無かった。
でも良いんだ。
だって私は、そんな貴女にこれからも惹かれていくんだから。
終