準備を終えた私は、おばさんに声をかけてバレーを始めた。


『愛佳ちゃん上手いわね〜!』


初めは緊張と不安で一杯だったけど、
時々おばさん達に褒められたり、アドバイスを貰ったりで、私の頬は自然と緩んでいった。


久しぶりのバレーは、本当に楽しかった。

一方渡邉さんはというと、体育館の端に体育座りをしながら ジーッと私を見ていた。


一旦休憩に入って、私は渡邉さんの元へと駆け寄った。


志:そんなに見られたら、なんか恥ずかしいよ...!


タオルで汗を拭きながら、渡邉さんにそう言うと


理:志田さんがとても楽しそうにやっているから、見入っちゃった!


なんて笑顔で、でも瞳からどこか悲しそうな 寂しそうな そんな感情が伝わってきた。


だから私は渡邉さんにこんな事を言った。


志:バレー、一緒にやろう?


渡邉さんは元テニス部。だからやりたいのはテニスという事もちゃんと分かってる。

だから、誘ってもいいのか微妙だった。

何言ってるんだって思われたかな。


そんな不安を抱えながらも、渡邉さんの答えを待っていると


理:出来ないから教えてね!


立ち上がった渡邉さんは、嬉しそうにそう言ってから、ボールを取りに行って

私は、そんな渡邉さんに続くよう足を動かした。



ボールを手に持った渡邉さんは、突然ボールをフワリと私の方へと投げた。


そのボールを咄嗟にレシーブすると、上がったボールを少しジャンプして渡邉さんはキャッチした。


理:志田さん凄い!カッコイイね!


志:大袈裟だよ...。


ただのレシーブなのに渡邉さんはとても褒めてくれて、照れるけどやっぱり嬉しかった。




その後 私は、渡邉さんやおばさん達と存分にバレーを楽しんだ。


志:今日は本当にありがとうございました!


理:ありがとうございました!


『こちらこそありがとう。とても楽しかったわ!
それと、これからこうやって集まる時は理佐ちゃんに知らせるから、良かったら二人でまたおいで!』


志:いいんですか!?


『大歓迎よ!それじゃあ気をつけて帰ってねね!』


そう言っておばさんは荷物を取りに行った。


理:志田さん良かったね!


志:うん!凄く嬉しい...!


理:じゃあはい!


志:ん...?


理:ほら、ハイタッチ!


志:ハイタッチか!うん!


パチンッ


ハイタッチをした後、私達は笑顔で体育館と 中学校を後にした。



志:これでまたバレーが出来る!


理:そうだね!バレー楽しかった!それに、志田さんとたくさん話せて嬉しかったよ...!


志:私も!


足を止めてからそう言って笑うと、


理:志田さんの笑顔すごい好き...力が湧くような感じで癒される!


街灯に照らされて、渡邉さんの火照った顔が瞳に映った。


志:ッ...。


その渡邉さんがとても可愛いくて、思わず私は渡邉さんに抱きついた。

渡邉さんは拒むことなく そんな私を受け止めてくれて、私の顔を覗いて微笑んだ。




大好きな部活を辞めさせられて、今日まで私は学校へ行く意味を失っていた。


そんな私は今日 渡邉さんと出会って、話して、本当に素敵な時間を過ごせた。



明日からもそんな時間を過ごせるなら、

私は、学校を辞めたい。そう思った事を全て無しとするだろう。