テスト期間が迫ってきた私、長濱ねるは土曜日の今日、涼しい図書館に勉強をしに来ていた。


平:ねるー私勉強したくない...


なんて言って早くも顔を伏せた、恋人のてちと一緒に。


長:まだ何にもしてないからね。というか勉強道具は...?


いくら経っても筆箱すら出さないから、気になって聞けば、
伏せていた顔を勢いよく起き上がらせて、てちは一言こういった。


平:忘れた...。


長:てち...。



図書館へ向かう途中に、何故私もてちも手ぶらな事に気づかなかったのだろう。


けど何を思っても今更。


それにこの涼しい図書館を出て、日差しの強い外へ出るのは苦痛だからと、私のシャーペンと一枚の紙をてちに渡すことにした。



長:てちー、はいこれ。


平:ねるごめん!ありがとう!



てちはお礼を言ってから、白い歯を見せて二ーっと笑った。


長:図書館だから静かにね。


平:...。


冷静にそう言えば、てちは肩をガクッと落としてへこんでしまった。


長:図書館に居る時だけは、少し声抑えてね。


私のせいで、てちをへこませてしまったから、どうにかてちを落ち込みから抜け出させようと、


ごめんって謝って優しく頭を撫でると、

テンションが完全に下がってしまっていたてちが、顔を火照らせクシャッと笑っていた。




それからようやく、私達は勉強を始めた。


長:これがこうで、こうすれば解けるよ?



自分で言うのもあれだけど、私は勉強ができる方だから、
全教科が苦手なてちに解き方を説明しながら、一緒に勉強した。









ー2時間後ー


平:もう無理ー...頭パンパン。


てちは頭を抱えて、ヤダヤダって首を横に降っていた。


時計を確認すると二時間勉強していた。

外も来たときよりは暑くなさそうだったから、


長:じゃあ帰ろっか...?


そう言うと、てちは満面の笑みで嬉しそうに頷いた。


てちって本当にわかりやすいな...。

そう思いながら片付けをして、私とてちは図書館を後にした。


長:まだ暑かったね...。


想像以上の暑さは、歩くだけで体力を削られる。
 

タッタッタッ

長:?


けどてちは突然この暑い中走り出して、どこかに行ってしまった。


暑いからって、彼女置いてかないでよ...。


心でそう呟いたあと暑さに負けて、私は道の端にしゃがみ込んだ。



それから十分ほど何もせずにしゃがみ込んで、顔を伏せていた。


すると、急に首筋にヒンヤリと気持ちいい何かがあたった。


ビクッと顔を上げると、そこには汗をかいてはぁはぁと肩で息をするてちが立っていた。


長:てち...?


平:はいこれ!アイス買ってきたよ...!


首筋にあたったのはアイスだったんだ...。

差し出されたアイスを受け取って、お礼を言ってからアイスを袋から取り出した。


長:急に走り出すから、置いてかれたのかと思ってた...。


平:ごめん!!ねるが暑そうだったから、アイスが必要かなって思って、走って買いに行ってた...!



てちはやっぱり優しい子だ。


長:てち大好き...!ありがとう!


そう言うと、てちは恥ずかしそうにはにかんだ。



アイスを食べ終わった私達は、涼しくなったからと手を繋いで家へと向かった。



長:今日私の家くる?


平:えっ、いいの?行きたい!


長:勉強会をお家で開くの...!


平:やっぱり行かない...。


長:何で!てち来てよ!!



そんな、幸せを感じる話をして。