両手を広げているのは何でだろう。


眉を寄せジッとねるを見つめていても、ねるが何を考えているのかはもちろん分からない。


聞けばいいのだろうけど、何だか聞いちゃいけない事のようで躊躇してしまう。



だから私は、ここからねるを見ているだけで

私の目に映るねるは、未だに両手を広げてどこかを見つめている。


他の生徒がもしこの状況を見たら、きっと疑問しかないんだろうな。


なんて考えると、笑いがこみ上げてきて
抑えられなくなった私はついに


理:プッ...ハハ


小さくはあるが声に出して笑ってしまった。


けど体育館だから、

小さな声も響いてしまって、ねるは視線を私に向けてこう言った。


長:そう言えば名前聞いてなかったね!教えて!


理:へっ?


私はポカンとした。


だって笑っていた事には触れず、突然名前を私に聞いたんだから。


タイミングが可笑しい...。


そう思いながらも、ねるは私が答えるのを待っているから、名前を教える事にした。


理:渡邉理佐だよ...。


長:理佐ね!覚えた!


ねるはそう言ってから、ニヤニヤと笑って


長:私が両手を広げてどこかを見つめている事、気になるんでしょ??


私が聞きたかった事を、ねるはスパッと当てた。


正解だから、私はコクンと頷いた。


それを確認したねるは、じゃあ話すよって微笑みながら言った後、理由を話してくれた。


長:体育館のステージで両手を広げている人なんて、普通居ないでしょ?
だから皆からは「変わり者」とか、「おかしな子」!
なんて言われたりするんだけどね、私はそれが嬉しいって言うかー...
皆と違う事をするのが好きなの!
だから、こうやって誰もやらないような事をしているんだ〜!


ねるが笑顔で言ったことを理解するのに、私は少し時間がかかった。


だれもやらないような事をやって、「おかしな子」って言われて


けど人と違うことをするのが好きだから、やめない。


頭を整理した私の口から出た言葉は、


理:なんだか惹かれる...。


なんて今の流れでは絶対言わないような、そんなおかしな言葉だった。