生徒会室には、当たり前だが誰も居ない。
なぜここに来たの?
そう言われたって、私は答えられない。
だって自分でも分からないから。
けどわざわざ理由を自分で探したり、無理矢理作ったりするのは面倒だったから、考える事をやめた。
大きめの黒いソファに寝転がり、そこから見える時計をしばらく見つめていると、
ガチャッ
突然聞こえたドアの開く音に、驚き焦った私は飛び起き、
先ほどとは違い、小さくちょこんとソファの端に座り直した。
そして恐る恐るドアの方に視線を向けると、
そこには驚く訳でもなく、
いつものように、おっとりとしている渡辺梨加さんが立っていた。
生徒会の人だったら何て言い訳しよう。
なんて、頭の中で急いで考えていたけど、
渡辺梨加さんだったからと、私は安心した。
けどなんで、渡辺梨加さんは生徒会室に来たのだろう。
足を組み替えて考えたが、分からない。
この前も思ったけど、渡辺梨加さんと生徒会室の繋がりって...?
思考をめぐらせたって、一つも浮かばない。
そんな考え事をしていると、
いつの間にか渡辺梨加さんは、私が座っている黒いソファの右側の端に、座っていた。
なんで同じソファに座るんだよ...。
気まづいじゃん。
そう思う反面、心のどこかで喜ぶ自分が居て、
そんな自分に呆れていると
ガチャッ
またドアの開く音が聞こえて、今度は勢いよくドアの方に視線を向けた。
そこに居た生徒は、私に気づいた瞬間に顔をしかめた。
しかし私もその生徒を見て、
「最悪」
そう心で呟いた。
その生徒とは、昨日廊下の曲がり角でぶつかり、私を鋭く睨みながら、大っ嫌いと言った人物だったのだ。
昨日の人物と一致した時、私は今すぐここから出たい。
そう強く思った。
だから強行突破するように、荒くソファから立ち上がって、
少し俯きながらも、スピードをつけて生徒会室を飛び出した。
バタンッ
ドアの閉まる音が聞こえて一安心すると、急にいくつかの疑問が浮かび上がった。
その一つは、昨日ぶつかった生徒は生徒会の人間だったのか、ということ。
もしそうだとしたら最悪だ...。
けどなんで生徒会の人間に、私は大っ嫌いと言われたのだろう...。
想像力を働かせても、理由は本人しか分からないからと適当に言い聞かせ、
フラフラと意味もなく、生徒会室に足を踏み入れた事を、私は後悔した。
続