今日は、私平手友梨奈16歳の誕生日。


そして今は、泣いているあるメンバーを慰めている所。

その子は私の恋人で、大切な欅坂46のメンバーでもある、守屋茜だ。


あかねんは勝負事が好きで、いつも気合いが凄い。


でも勝負に弱いから、あかねんはいつも負けて、悔しさから大粒の涙を流す。


それで、今あかねんが泣いている理由は、

あかねんが私の所に来る前、数人のメンバーとババ抜きをしていたらしいんだけど、

十回勝負して、あかねんは全部負けちゃったんだって。


その事で、悔し泣きをしてしまったらしく
一緒にババ抜きをしていた愛佳と理佐が、私達じゃ対応出来ないって、


「ハッピーバースディ...!」


少し苦笑いをしながらそう言って、泣くあかねんを連れてきた。


メンバーですら、ババ抜きで泣く?

そう思っただろう。


もちろん私もそう思った。


でも泣くあかねんを慰める事が、私は嫌いじゃない。


平:次は勝てるって!

そう言って私が励ましても、

守:もう嫌だ嫌だ...!!


駄々をこねる小さな子供みたいで、全く泣き止む気配はなかった。

だからつい口を滑らせて、


平:子供みたい...。

私がそう言うと、

守:子供じゃない...!

私の膝で泣いていたあかねんが、ムクっと起き上がって反論した。


ごめんごめんって頭を優しく撫でると、


守:だから、子供じゃないってばぁ...!


いつの間にか泣き止んでいたあかねんは、不満そうな口調で、
けど子供みたいに無邪気な笑顔で、私の手を掴んで頭から離した。


そして子供扱いされてムッとしたのか、あかねんは仕返しとばかりに私の頭をグシャグシャッと雑に撫でて、


守:てっちゃん!お誕生日おめでとう...!

ずっと泣いてるから、忘れちゃったのかなって、少し不安になっていたけど、
覚えていてくれて、私が大好きな素敵な笑顔を見せて、あかねんは祝ってくれた。

平:ありがとう...!

嬉しくて、笑を零しながらもお礼を言うと

守:もう16歳かー...。でも、私からしたらまだまだ子供!


悪戯な笑顔でそう言ったあかねんは、ギュッと私を抱きしめた。


抱きしめ返すと、とても心地よくて...。

そして、胸がドキドキと動いた。


でもあかねんの腕の力が、どんどん強くなるから、


平:あかねん苦しい...!

少しこもった声で、あかねんにそう伝えると

守:離したくない...。てっちゃんは、私には無い素敵な羽根を持っているから、
突然大人になって、私の前から居なくなっちゃうんじゃないかって不安なの...。


いつも強気で、不安だったりをほとんど言わないあかねんから、
初めて不安という言葉を聞いた。


でも私に、そんな素敵な羽根はない。


けどもしあるとするなら、私はそれを自分で切り離すだろう。


だって私にそんな羽根は必要ないし、例え切り離せなかったとしても、
突然、居なくなったりなんかしない。


だから、あかねんにこう伝えた。


平:離れる訳ないじゃん!あかねんと一緒に居れなきゃ嫌だもん...。


私の言葉を聞いたあかねんは、安心したのか腕の力を緩めて私の目を見た。


だから私も、あかねんの目をしっかりと見て、


平:一つだけ、ワガママ言ってもいい?

そう言うと、あかねんは嬉しそうに頷いた。

平:これからもずっと一緒にいて...?それと来年の誕生日も、今日みたいに楽しく過ごしたい...。


初めてのワガママかもしれない。あかねんは頷いてくれるかな?

また不安になりながらも返事を待っていると、

守:一つじゃないじゃん...!でも約束する!


あかねんに指摘されて、ほんとだ。って納得していると、
あかねんは私に、小指を差し出した。


だから私は、自分の小指をあかねんの小指に絡ませて、

平:約束!

そう言って笑うと、あかねんも笑って頷いた。


すると何かを思い出したかのように、慌ただしく突然あかねんは立ち上がって、


守:ちょっとごめん!

一言謝ってから、私の部屋を出て行った。

5分くらい経つとあかねんは戻ってきて、

平:お仕事?それとも予定あった...?

そうだったら嫌だなって思いながら、質問すると、あかねんは首を横に振ってから私に近づいて、


守:ジャーン!!


そう言いながら元気よく私に差し出したのは、小ぶりの鉢に入っている、造花で三つ葉のクローバーの観葉植物だった。

平:可愛い...!!

テンションが上がって、ピョンピョンと跳ねる私を、あかねんはニコニコしながら見守っていて

守:ほら落ち着いて!それと、ここよく見て!


あかねんが指さす所を見てみると、そこには隠れるように、一つの四葉のクローバーがあった。

平:これって四葉のクローバーだよね!?

守:うん!受け取ってくれる?


心配そうにしているあかねんから、もちろんだよって受け取って、早速玄関先に飾った。


平:ありがとう!あかねん大好き...!

そう言って、思いっ切りあかねんに抱きつくと

守:幸せ、私も大好きだよ...!

耳元でそう呟くあかねんに惚れ直してから、腕を緩めて見つめ合うと、
大好きな人が傍に居る事の幸せさを実感する。


しばらく見つめ合うと、あかねんの顔が赤くなっていくから、

平:あかねん顔赤い...。

そう言うと、あかねんは照れ笑いをしながらこう言った。

守:てっちゃんだって、赤いよ...!

平:気のせい。

なんて冷たく誤魔化したけど、自分でもポーッと顔が火照っていくのを感じたから、多分あかねんから見たら真っ赤だったんだと思う。



2人で真っ赤になりながら、おでこを合わせて笑った今日の誕生日は、あかねんとの思い出の一つに、華々しく加わった。