キーンコーンカーンコーン

授業の終りを知らせるチャイムが鳴り、沈黙が続いた私達に会話が生まれた。

理:変な質問ごめん...。

梨:ううん...。

理:教室戻ろっか?

梨:そうだね...。


私は初めて、渡辺梨加さんと並んで歩いた。

というか、人と並んで歩くこと自体が久しぶりだ...。


隣の人に歩くペースを合わせるのが、
苦手で、嫌いで、面倒で。

でも渡辺梨加さんはゆっくり歩くから、いつもの自分のペースで歩くと、
すぐに並んで歩くこと事が、出来なくなってしまう。


恋愛感情がある訳でもないし、渡辺梨加さんはただのクラスメイトなのに、

隣に誰かがいる事が久しぶりで、
その嬉しさを、自分で無くしてしまうのが嫌で、

だから私は、渡辺梨加さんに歩くペースを合わせた。


それにしても、歩くの遅いな...。


そう思いながらも歩いて、ようやく教室についた時には授業が始まる一分前だった。


生徒会室は二階、クラスは三階。

三分ほどでつくはずの距離が、何故か休み時間の十分間を全てを使ってしまうなんて...。


でも私は、疲れを感じなかった。


渡辺梨加さんからは、何かパワーが出てるのかな?

意味のわからない事を考えて、私はそのまま授業を受けた。









ー放課後ー

 クラスの皆は、恋人や仲の良い友達とワイワイと楽しそうに話しながら教室を出ていった。


教室にまだ残っているのは、授業をサボった反省文を書かされている、
私と渡辺梨加さんの二人。


反省文ってどうやって書くのだろう。


初めて書く反省文が面倒になった私は、ペンをクルクルと回した。

簡単に言ったらペン回しってやつ。


そんな私とは違い、渡辺梨加さんはスラスラとペンを動かしていた。

いま考えると、たまに渡辺梨加さんが放課後残っていたのは、
反省文を書いていたからなのかな?

それで書き慣れてるんだな...。


いつの間にか、ペン回しすらしなくなっていた私の目に映っていたのは、渡辺梨加さんの後ろ姿だけ。


すると渡辺梨加さんが、パッと私の方を振り返った。

見てたことバレた。


恥ずかしいな...。

そう思っていると、
渡辺梨加さんが立ち上がって、私の元に歩いてきた。