渡辺梨加さんを探すこと、約三十分。

それなのに、何故かまだ見つからない。


屋上、中庭、保健室に空き教室。

もう学校中はほとんど探したというのに、どこにも居ないなんてどういう事?


理:はぁぁ...。


ため息をついて、私はドアに寄っかかった。

すると、

ガチャ

理:わっ...!

急にドアが動いて、後ろによろめくと
目の前に渡辺梨加さんがいて、とても驚いた。

梨:渡邉理佐さん、何してるの...?

理:何してるって、渡辺梨加さんこそなにしてるの?


貴女を探してた。

なんて本当の事を言えなかった私は焦って、された質問をそのまま渡辺梨加さんに返した。


梨:視線に耐えられなくなって、逃げてきちゃった...!


渡辺梨加さんはそう言って、悪戯っぽく笑った。

それと、今まで驚きから気づいていなかったけど
渡辺梨加さんがいた場所、生徒会室だったんだ...。

渡辺梨加さんと生徒会室は繋がりが全くないと思ってたから、想像もつかなかった。


理:教室出てから、約三十分間も生徒会室で何してたの?

梨:ボーッとしてた...。

理:えっ?それだけ?

確認するように、もう一度聞くと渡辺梨加さんはコクンと小さく頷いた。

三十分間、何もしてなかったんだ。

凄いな、ある意味才能...?


自分でそう思って、
勝手に面白く感じた私から、笑がこぼれた。


そんな私を、渡辺梨加さんは不思議そうに見つめた。

私からしたら、圧倒的に渡辺梨加さんの方が不思議なんだけどね...。



せっかく話せたんだし、この機会に気になっていた事を聞いてみよ。

そう思って、私は渡辺梨加さんに何個かの質問をした。


理:一人で居ること好き?

梨:うん...。

理:輪に入るの苦手?

梨:うん...。

理:いま、幸せ?

梨:...。

前の二つの質問には、スッと答えたのに
「いま、幸せ?」その質問にはすぐに答えず、少し上を見上げて考えていた。


焦らす必要なんて無いからと、渡辺梨加さんの目を見ながら答えてくれるのを待った。


けどいくら経っても、その質問に答えてくれることはなくて
勝手に、幸せじゃないんだな...。


そう思って、答えを待つのをやめた。

でもやめた途端に、この状況が気まづくなった私は、早くチャイムが鳴ることを願った。


でも願ったところで、授業が終わる時間にならなければ、チャイムは鳴らない。


いつもなら、面倒になって静かに立ち去るけど、
渡辺梨加さんの前から立ち去る事が、私は何故かできなくて、


それから約十分間。

チャイムが鳴るまで私達二人は、生徒会室の前で、ただただ無言で居るだけだった。