体育館についた私の目には、またあの二人が映った。


おかしい、大好きだったはずのみいちゃんにまで苛立ってきた...。

体育館の隅に二人で並んで座って、楽しそうに話している。

二人が付き合ってると実感が湧けばわくほど、苦しくて、
少し前のように笑ったり、優しい声をかけたりできる状態では無くなってしまった。

ただ私の頭に浮かぶのは

「怒り」「嫉妬」「憎しみ」

そんな、酷いことだけだった。


でもみいちゃんは前のように、私の元に来て話しかけてくれた。

美:理佐はやっぱりバスケ上手いね?

だけど私は、みいちゃんの少し奥に立っている志田さんに視線を向けていた。

ただ見ているだけではない、睨んで怒りを向けていたんだ。


そして私はそのまま、みいちゃんの背中に腕を回した。

美:えっ!理佐...?理佐!

みいちゃんが志田さんの彼女なんて信じたくない...。

嫌だ、嫌だ。

驚きながら、私の名前を呼び続けるみいちゃんの声を無視して、
私は、腕に力を入れた。


視線は志田さんへ向けたまま...。


そして、志田さんと目が合うと勢いよく志田さんは走ってきて、
そのまま私とみいちゃんと引き離し、それと同時に志田さんは私に叫んだ。

志:何してんだよ!

志田さんの怒鳴り声、久しぶりに聞いたな。

そう思いながら志田さんに言葉を返した。

理:何って、みいちゃんに抱きついてただけ。

志:はあ?何言ってんだし。

志田さんは鋭い目で私を睨むけど、私も志田さんと同じくらい鋭い目で睨んだ。

理:何が悪いんだよ。

志:何が悪いって...!ふざけんじゃねーよ!!


バンッ!


志田さんの叫び声と一緒に、私の左頬に志田さんの力強い拳が当たり、
私はそのまま体育館の床に尻餅をついた。


私は怒りがこみ上げ、立ち上がろうと床についた手に力を入れる。

だけど私と志田さんの間に

美:何してるの!?

そう強く叫んだみいちゃんが立った。


美:愛佳、何で殴っとう...!


みいちゃんは志田さんの肩に両手を置いて、軽く肩を揺さぶりながらそう言っていた。

すると志田さんは、

志:美波はこいつの味方なのかよ...。もういい!

そう言って、みいちゃんの腕を振り払って体育館を走って出ていった。


美:愛佳...。

みいちゃんは志田さんを追いかける訳でもなく、私に声をかけることもなく
ただ、その場に立ち尽くしていた。


座ったままの私は力を抜き、その場に大の字で寝転がった。




すると、体育館の天井を見つめていた私の視界に
葵が映り込んできた。


葵:ねえ理佐...なんでこんな事に...。