「ごめん」

屋上に座り込んでいると、あの時のみいちゃんの言葉が頭をよぎる。


みいちゃんは志田さんと付き合ったと、葵から聞いた。


私と志田さんはバスケ部の選手、そしてみいちゃんはマネージャー
だから、会いたくなくたって部活に行けば会ってしまうんだ...。


みいちゃんに振られてから二週間が経ったというのに、私はまだ諦める事が出来ていなかった。


だからこうして、休み時間は屋上に来てしまうんだ。


すると

ガチャッ

屋上の扉が開く音がした。


みいちゃんだといいな...そう思いながら振り向かずにいると
隣に誰かが座り、私に話しかけてきた。

?:理佐って、立ち直れないタイプだったっけ?

それは心配するような声じゃなくて、どこか馬鹿にするような葵の声だった。

私は、立ち直れないタイプじゃなかった。

でも何故か、今回はすぐに立ち直れない。

図星だからこそイライラして、隣に座っている葵に毒を吐いた。

理:うっさいんだよ、小学生!!

いつもなら、冗談交じりの声になるはずなのに、どこか本気で言ってしまって、
小学生って言われるのが嫌なの事も知っていたのに、言ってしまった。


だから葵の顔を見れなかった...。


それに葵はいつもみたいに言い返してこなくて、静かに立って私の隣から居なくなってしまった。



ヒュー...



聞こえてきたその風は、みいちゃんに振られた時と同じ風に感じた。

理:八つ当たりなんて最低だよ...。


私はそう呟いて、屋上を出た。




教室に戻ると、あかねんとゆっかーが楽しそうに話していた。

守:ねえねえゆっかー!今日の放課後、デートしようよ!

菅:うん...!楽しみだね!

聞こえてきた二人の会話を、私は羨ましいと感じた。

二人はいつの間にか付き合っていたみたいで、毎日幸せそうな会話が聞こえてくるんだ。


振られた私には、その会話が苦しかった...。

すると、廊下からみいちゃんの声が聞こえた。

タッタッタッ

小走りで教室から廊下を覗いてみると、そこには志田さんの腕を掴むみいちゃんの姿が見えた。


それだけでも充分、私には辛い。

なのに私の耳には二人の会話が聞こえてきた。

美:なあなあ志田さん!

志:声でかい、てかそろそろ愛佳って呼んでよ。

美:愛佳って呼んで欲しいん...?

志:悪い?

美:悪くない!


あの二人も幸せそうに話していた。

なんで、皆幸せそうなの...?

どうして、みいちゃんは志田さんを選んだの...?



みいちゃんと志田さんの後ろ姿を見つめていた私の心には、一つの黒い花が咲いた。