固まった体。
それとは対照的で、頭にはたくさんの言葉が浮かんだ。

「聞いてない...聞いてないよ。どうして、どうしてなの、理佐...?」

私は一番後ろの席だから、席に座る理佐の後ろ姿だけしか見えなくて
どんな表情をしているのか分からなかった。


それからしばらく経って解散になった。

そして私はすぐに、理佐の元へ駆け寄った。

梨:理佐...なんでもっと早く、教えてくれなかったの...?

そう言いながら私の目は涙によって潤んで、もうちょっとで零れそうだった。

けど理佐は質問に答えてくれなくて、

理:明日の朝九時に、家を出発するから...

それだけ言って理佐は行ってしまった。

本当に、遠くに行ってしまうのだろうか、
私は信じられなくて
教室に残っていた先生に声をかけた。

梨:菅井先生!!

先生:梨加さんどうしたの?

梨:理佐の転校って、本当なんですか...?

そう聞くと、先生は残念そうに頷いた。

理佐から家を出発する時間を言われた、その時点でもう分かってたはず。

でも、嘘であって欲しかったから先生に確認したんだ。

けど転校は、嘘なんかじゃなくて紛れもない真実。

明日の朝、理佐に会えるのは最後なのかな...
そうだとしたら

梨:私、明日笑えるかな...


なんて呟いて、誰も座っていない理佐の席を見つめた。


…………………………………

ー次の日ー

理:梨加、今日来てくれるかな...

部屋の中からダンボールは運び出され、スッキリとした部屋の窓から外を眺めた。

時刻は八時半。

今日は平日だから梨加は学校だ、でもきっと来てくれる。
そう信じて、私は梨加を待った。

でもそれから少し時間が経ったったが、梨加はまだ来ていない。

あと十分で家を出るのに...

そう考えたら、私は急に心配になった。

最後に言いたい事があったから、出発時刻を教えたのに、
もし来てくれなかったら、
私の気持ちを梨加に伝えられる日は、もう来ないよ...。



すると

母:理佐?もうそろそろ時間よ?

父:理佐出るぞ。

妹:お姉ちゃん!行こー?



私を呼ぶ家族の声。もう行かなきゃか...



私は虚しい気持ちのまま下へと降りていった。