莉菜に抱きついた私の耳に

「ちびーず本当に仲いいなー!」

「付き合ってるみたい!」

クラスメイトのそんな声が聞こえた。
けど、私にとってその言葉は嬉しいようで切ないんだ。
だって、今莉菜の頭に浮かんでるのは
目の前に居る私じゃなくて、きっと別の誰かだから...。

それが誰なのか私はまだ知らない。

ううん、本当はなんとなく気づいてる。

けど確証なんてものは無い方が、私は傷つかないで今みたいに莉菜の傍にいれる。

今の私に莉菜の恋を応援するなんて到底無理なんだよ...。



そんなことを考えていたら、自然と莉菜の背中に回していた腕に力を込めてしまったみたいで

莉:佑唯ちゃん...苦しいよ...?

小さな莉菜の声が聞こえて、すぐに回していた腕を背中から離して莉菜を見つめた。


けど莉菜ちゃんの視線は私じゃない誰か。


知りたくない...そう思っていても、
どこかで私の中の好奇心が顔を出していて、
その好奇心に負けた私は、ゆっくりと莉菜の視線の先へ目を動かした。

そして、そこには携帯を見つめる渡辺さんの姿があった。

何となくそうかもしれないって思ってたけど、それが本当だと分かってしまうと
心がとんでもなく締め付けられて苦しい...

渡辺さんをジッと見つめていたら

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴って莉菜は自分の席へ向かっていった。

莉菜と渡辺さんは席が隣同士、それに比べて私は莉菜とすごく離れている...

今:ずるい...

そんな事思っても無駄な事くらい分かってるけど、そう呟かずには居られなかったんだ...



…………………………………

私が見ていたのは一枚の猫の画像。

この子は二年前に道に捨てられてたんだ...

そしてその時出会ったのが、隣に座っている上村さん。
上村さんとは偶然、同じ中学校でその時以来少し話すようになった。

そして今は仲の良いお友達...

そんな上村さんを見ると、クラスメイトの今泉さんと抱き合っていた。

あの二人は本当に仲が良い。そんなことを思っていると

?:梨加誰見てるの?

後ろから誰かに話しかけられた。
ゆっくり後ろを振り向いてみると、そこにはだるそうに立つ理佐が居た。

梨:理佐...

理:おはよ。

梨:あっうん、おはよう...!

そう言うと理佐はニコッと笑ってから、どこかへ歩いていった。

理佐も私と中学校が同じで、高校も同じ
つまりすごく長い時間、理佐とは過ごしてきたって事。

だから理佐の様子がおかしいのに私は気づいている。
けど無理に聞くのも悪いから、理佐が話してくれるまで私は待つことにしたんだ...