今:莉菜おはよー!!

教室に入ると、昔からの親友である佑唯ちゃんが元気よく挨拶をしてきた。
佑唯ちゃんとはとても仲が良いから、クラスメイトからは「ちびーず」なんて言われたりもしている。

莉:おはよ!

挨拶を返して自分の席に座る、そして隣の席に座っている梨加ちゃんを確認するように見た。

私は中学生の頃から、梨加ちゃんに恋をしている。

隣に座る梨加ちゃんは、携帯を片手に一枚の画像を見ていて、
その画像に写っているのは一匹の猫。

その猫が梨加ちゃんとの出会いであり、私の恋の始まりだった。




〜二年前〜


学校を出て帰宅途中、ある道で一つのダンボールを見つけた。
覗いてみるとその中には小さな子猫、きっと捨てられてしまったのだろう。

莉:お前みたいな可愛い子捨てるなんて、酷いね...。

そう呟いて頭を撫でた。

ニャー

莉:お母さんが猫アレルギーだから連れて帰れないんだよ...ごめんね

謝りながらまた頭を撫でていたら近くから
タッタッタッと走る音が聞こえて顔を上げると、

制服を着た女の子が手に何かを持って、こっちに向かって走ってきていた。
同じ学校の制服!そう思っていると

ザザーッ!!

莉:えっ!?

あともう少しという所でその子は突然、私の視界からいなくなって
視線を下へ動かすとその子は転んで地面に倒れていた。

タッタッタッ

私は急いでその子の元に走った。

莉:大丈夫...?

心配しながらそう声をかけると、ゆっくりその子は顔を上げてこう呟いた。

梨:ミルク、こぼれなくて良かった...

普通は自分のことを一番に考えるはずなのにミルクの心配って、不思議な子。
その子の第一印象はそれだった。

するとその子は痛そうに立ち上がり、ダンボールの前にしゃがんで
子猫にミルクをあげ始めた。

けど私の目には子猫じゃなくて、黒髪ロングの女の子だけが映っていた。

それなのにその子が急に私に話しかけて微笑む

?:美味しそうに飲んでる...可愛いね?

莉:えっ?あっうん!

焦ってしまい変な子って思われちゃったかも...
そんな心配をしていると、その子は子猫を抱っこして

?:私、この子連れて帰る...

そう言って歩いて行こうとしていたから

莉:あの!

私はその後を呼び止め

莉:名前聞いてもいいかな...?

そう聞くと名前を教えてくれた。

?:渡辺梨加...

莉:梨加ちゃん?

梨:そう...貴女は?

莉:私は上村莉菜...!

梨:上村さんね!今度この子、見に来てね?

莉:もちろん!

返事をすると梨加ちゃんはまた微笑んだ。
その笑顔に私は惹かれたんだ...



これが梨加ちゃんと出会い、好きになった出来事。
それなのに想いを伝える機会もなく、二年もたってしまった

そんなことを思い出しながら梨加ちゃんを見ていたら、梨加ちゃんがこちらを向いた。

ドキッ

目が合うだけで好きが溢れる

それなのに梨加ちゃんは

梨:上村さんおはよう...!

そう言って微笑むものだから、私の心臓はもうバックバクだ...。

莉:おはよう!子猫だったの

今:莉菜ー!

「子猫だったのにもうそんなに大きくなって。」そう梨加ちゃんに言おうとしてたのに
佑唯ちゃんの声に遮られた。

ムスッとしながら佑唯ちゃんを見ると、私の気も知らないで私を手招きしている。

梨加ちゃんはというと、もう私のことは見ていなくて携帯に夢中。

莉:はぁ...

ため息をついてから私を呼ぶ佑唯ちゃんの元に向かった。

莉:佑唯ちゃんどうしたの?

そう言うと佑唯ちゃんは突然私に抱きついた。

莉:ちょっ佑唯ちゃん、、?どうしたの...?

私の言葉を無視して佑唯ちゃんは私の背中に腕を回したまま。

すると

「ちびーず本当に仲いいなー!」

「付き合ってるみたい!」

近くに居たクラスメイトにそんなことを言われた。

けど私がその時思った事は、
何より梨加ちゃんに見られたり聞かれたりしてないか、それだけだった...。